『Fate/Samurai Remnant』の感想
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『Fate/Samurai Remnant』の感想を書く。
ネタバレなしで書く。しかし、未プレイの人がプレイ前に知っておいたほうがよいと思われることは、書く。未プレイの読者で、厳密にネタバレなしの状態を維持したい方は、本記事を読んではいけない。しかし、そんなに完璧なこだわりをもつ方は、すでに、インターネット遮断の上 1 周目くらいはクリア済みであろう。
結論
私の期待よりもずっと良かった。 2023 年に私がプレイしたゲームの中で、現状 2 位に入っている。これは私が Fate シリーズが好きだからだけではない。ゲームとして優れている。 Fate シリーズが少しでも好きな人は、ブランクに関わらず楽しめるであろう。
後述する通り、アクションゲームとしても快適である。特筆、キャラゲーとして優れている要素が盛り込まれているわけではないが、基礎体力が高いので、購入を検討する人なら楽しめる要素があるだろう。
プレイ時間は、かなり長くなる。しかし、少なくとも 1・2 周目にだるくなることはないであろう。これは、価格に見合った価値があるとも考えられるし、例えば勤め人ならば休暇の予定を調整しなくてはならないだろうとも考えられる。
準備
私について
ゲームの感想を書くときは、筆者がどんなステータスかを書いておかないと、読む方も困ると思う。なので、いつも通り、私の現状について書く。
現状、私は PlayStation 5 版の『Fate/Samurai Remnant』を 4 周した。全てのエンディングを見た。伊織もセイバーも Lv.100 まで育てている。プラチナトロフィーを獲得した。ただしこれからリリースされるであろう DLC については、全く知らない状態である。
難易度については、 1 周目は剣豪(最高難度)、 2 周目は剣鬼(クリア後に解禁される真の最高難度)、 3・4 周目は剣士(最低難度)と剣鬼を入れ替えながらプレイした。総プレイ時間は約 90 時間である。
『Fate』シリーズについては、各作品、ストーリーを大づかみにはしてあるが、細部までしっかりとはわかっていない。熱心なファンとは、とても言えないだろう。一応アニメは、『Fate/strange Fake』以外の全作品見ている。『Fate/Grand Order』は継続してやっている。
記事
多くあるが、次の 3 つは読んでおくのがよさそうである。
- TYPE-MOON エース VOL.15 に出た、奈須さんとシブサワ・コウさんの対談。一部は公式サイトにある。
- 4Gamer のインタビュー記事
- ファミ通のインタビュー記事
本編
シナリオについて
「コーエーテクモが贈る、究極の聖杯戦争体験」という触れ込みであるが、これは正しいと思った。私がプレイした感想としては「プロであるコーエーテクモゲームスが、自らの得意分野を活かして作った、究極の Fate の二次創作ゲームである」となる。二次創作は、その愛情ゆえに、ときに、本家を超える。私は DL 版を 9,680 円で買ったが、その価値はあったと感じる。
シナリオの節々に、過去の Fate シリーズに見られた要素が散りばめられている。特徴的なセリフだけではなく、キャラクターの造形も、展開も、である。これはライターさんが、過去作品に詳しいからできることである。そういうところが実に、同人要素を感じさせる。もともと同人の文脈で型月は発展してきたので、むしろこういうところに、プレイヤーの多くは感銘を受けたのではないか。コーエーテクモ、なかなかやるじゃないか、と。シブサワ・コウさんも褒めていたが、ライターさんは非常に優秀である。
脱線するが、社長であるシブサワ・コウさんは相当なゲーム好きであると言うことが、上述の TYPE-MOON エースからも伝わってきた。『Fate/Grand Order』のヘビーユーザーであるのは、それだけでも驚異的であるものの、まぁ、わかる。しかし、『月姫』『まほよ』をやって、感想を具体的に述べられるのには驚きを感じた。私が 70 歳になってからはじめて、伝奇系ジュブナイル全開であるところの『月姫』をやって、何かを感じることができるだろうか。
『Fate/Samurai Remnant』をやって、コーエーテクモゲームスの印象が非常に良くなった。多分そういう人は多いと思う。私は、シブサワ・コウさんに感謝している。『Fate/Grand Order』のファンで、 TYPE-MOON に企画を提示してくださった。感慨深い。また、コーエーテクモゲームスと TYPE-MOON を繋げたアニプレックスの岩上さんは、いつもながら、更にファンからの信頼が厚くなったであろう。
戻る。ネタバレ無しなので、シナリオは多くは語らないが、新規サーヴァントと既存サーヴァントがうまく配置されていた。各サーヴァントの真名が徐々に判明していく状況となり、それがゆえに、 2 周目も楽しくやれた。コーエーテクモが作ったシナリオであるが、かえって原点の Fate に回帰していると感じた。
キャラクターについて
Fate シリーズは結局のところキャラゲーである。キャラゲーとしてもよかったと思う。
まずコーエーテクモゲームスがやるのだからということで、日本の江戸時代が選ばれたのは、当然、優れていた。シブサワ・コウさんが武蔵ちゃんの大ファンで、彼女を出してほしいと言っていて、それがきっちり通ったという。他のゲーム会社が聖杯戦争を作ると、別の時代と地域になるであろう。
グラフィックは、以下に述べる理由もあり、さほど高レベルとは言えない。アニメ調のキャラゲーに限っても、日本の大手他社のハイエンドゲームのほうが、より高いレベルを作る可能性はある。もっというと、近年の中国はもっとそうである。ただし、そこは Fate のゲームであることを考えれば、そこまで悪いことでもない。テキストがしっかりしていて、キャラクターの造形が深く、 2 次元絵がしっかりしていれば、ついてこれるからである。声優さんの演技も、立ち絵も、当然、素晴らしく、この点は何も文句がない。基礎体力がしっかりしている。
このゲームの成立させる上で避けられない最難関の要素は、主人公である宮本伊織がどうしてサーヴァントと戦えるのか、ということである。なぜなら Fate シリーズでは「マスターがサーヴァントにそうそう太刀打ちできない」からである。インタビューにも述べられているが、できないわけではないが、できるとしたら理由がないとおかしい。ましてや、これはアクション RPG なので、主人公もマスターも成長していく。だから、伊織がサーヴァントと戦えるようになるのは、時間の問題である。そのため、理由付けが大事である。その部分に対するフォローもきっちり入るので、これは Fate であるという風に、最後までクリアした人は捉えたであろう。この部分は、 DLC に続くのかもしれない。
アクション RPG として
私としては快適であった。
先程グラフィックが、さほど高レベルではないと書いた。しかし、フレームレートの低下がほとんど見られなかった。通常、グラフィックのレベルは、フレームレートの安定度とのトレードオフであり、後者をとった結果だろうと推測できる。
最近のゲームは、パフォーマンスモードを選んでも、フレームレートが安定せず、ゲーム体験が大幅に損なわれることが多々ある。フレームレートが低下するくらいなら、グラフィックはさほどよくなくてよいというのが、私の正直な気持ちである。この点、ここ最近の日本・中国のソフトは、北米・欧州のソフトより、優れていることが多いと感じる。この段落は、あくまで私の主観である。
『Fate/Samurai Remnant』の PS5 版では、フレームレートの低下がほぼなかった。私がプレイ中に見た限り、複数のマスター・サーヴァントが移動している場面でわずかにあったが、バトルシーンでは皆無であった。少なくとも、気が付かなかった。
アクションゲームなので、硬直が発生しないことは重要である。共鳴絶技や秘剣や魔術やサーヴァント交代は、押せばすぐに発動する。この点は、ストレスがなく、非常に優れている。ただし、当たり前のことであるが、アクションゲームであるので、やられている間は発動できない。何をどれで中断できるかを見極め把握するのも、アクションゲームでは重要である。
攻撃範囲もかなり広く、しかもエフェクトがわかりやすい。 Fate シリーズをキャラゲーとしてやる方の中には、ゲームが上手ではない方もいる。そういう方にとっては、画面の変遷が激しく、困難さを感じるかもしれない。
少し補足する。 Fate シリーズは、ストーリーを主に楽しんでいる人が多くいる。 ω-Force はカジュアルなアクションゲームを得意としているから、親和性は高い。しかし、普段のお客さんは『Fate/Samurai Remnant』の最低難易度をクリアできても、 Fate シリーズのファンにはゲームが得意でない人もいて、そういう人は最低難易度でも困難を感じたかもしれない。さらに踏み込んだ補助があると、よかったように思う。ただしそれが何であるべきかは、私自身もわかっていない。この件に関して論じると非常に長くなるので、不十分は承知でもここで打ち切る。別の記事に書くかもしれない。
これだけ要素があるのに、多くのサーヴァントが操作可能である。しかも個性的なアクションをする。私は、逸れのキャスターのアクションが使いやすいと思った。彼女はとくにそうだが、『Fate/Grand Order』の攻撃モーションをアクション RPG に昇華させたモーションが多く出てくる。ファン要素を感じる。
レベルアップ以外でのスキルポイントが多数獲得できるので、主人公・伊織も、そのサーヴァントであるセイバーも、必要な要素は伸ばしていける。
上述の「マスターがサーヴァントにそうそう太刀打ちできない」という要素をしっかり表現するために、外殻ゲージがある。これは、この要素を取り入れるための模範的な解答である。
以上を鑑みると、「快適」という言葉が、最も正しいように思う。 ω-Force 作品であり、聖杯戦争であって無双ものではないところに、きちんと落ち着いている。
事前に知っておいたほうがよいこと
このゲームはボリュームがかなり多い。次のような構造になっている。ネタバレ無しなので細かいことを省いて結論だけ述べる。
- エンディングが 3 つある。そのうち 2 つは 1 周目から突入可能であるが、最後の 1 つは 2 周目以降にしか入れない。そしてどちらのルートのほうから突入してくるかによって微妙に違ってくる。
- 1 周目では、様々な要素がわからずに終わる。
- 2 周目以降は、エンディングに至るまでのシナリオが若干変化する。なので、 2 周はする必要がある。
- 追加要素を全てクリアしようとすると、引き継ぎありで 3 周目まではやることになるであろう。人によっては、こだわりがあり、 4 周することになる。
私は 1 周目をクリアするのに、 50 時間くらいかかった。トロフィーコンプリートには 90 時間くらいかかった。
多くのファンは 1 周目クリアではとても満足できないであろう。わからないで終わるからである。
このことをここに明記するのは、私の個人的な体験に基づく。
私は『Fate/Samurai Remnant』を 1 周クリアすれば、だいたいのことがわかるであろうと思っていた。休暇は 2 週間とっていた。しかしこれは、『Fate/Samurai Remnant』を 1 週間でクリアし、後半の 1 週間で『アサシンクリード ミラージュ』をクリアする予定であったからである。
そして、蓋を開けてみたら、この予定は崩れた。クリアしてから、 1 周目では、足りないことに気がついた。これは Fate を最大限リスペクトして作られている作品だから、『Fate/stay night』のように、マルチエンディング方式だったのだと。
幸いなことに、『アサシンクリード ミラージュ』は 1 週間で全実績解除までいけた。だから私は、『Fate/Samurai Remnant』の 2 周目をやるために、更に休暇を 1 週間延長することにした。しかしそれでも、まさか 3 周以上必要だと思っていなかったので、終わらなかった。これが顛末である。
念のために言っておくと、有給休暇は断続的にとっていて、祝日や他の理由の休暇も含めている。私にとって、ゲームを毎日毎日毎日毎日やるのは、通常勤務よりもずっとつらい体験である。ゲームの「休憩」として、研究開発業務をする。 3 週間をまるまる有給休暇としたわけではない。あと、補足をしておくと、現職がつらいと思ったことは 1 度もない。平日は、毎日、楽しい。
以上のことは、こうも捉えられる。すなわち、 3 週間にさらにその後の土日も足して、聖杯戦争に入り浸れたのは、満足度が高い。最近は物価高や円安で、ソフトの価格は高くなっているが、『Fate/Samurai Remnant』には、ソフト価格に見合った価値が十分にあったと考えている。