日記 2023 年 5 月 27 日

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現状の生活がうまくいきそうなので、今まで断片的に書いてきたことを、まとめて、明らかにしておきます。

研究時間について

現状の生活

現在の私は、ほとんどすべての時間を、私が自分で決めたとおりに使えています。

業務でやる研究開発の対象は、全部、私が決めたことです。研究開発以外のことで、私がやらなければならない業務は、わずかな会議に出ることと、勉強会に出ることだけです。

私がやらなければならない家事は、机の上を拭くことと、モニター・音響の周りと本棚を掃くことと、ご飯を炊いて冷凍することくらいです。

これらは、現在の私をとりまく方々のご厚意のおかげです。とても感謝しております。

研究時間を増やしすぎて、倒れた

こういう状況が完成したのは、 2023 年 1 月でした。当初の私は、「もっと、研究をやるんだ」といって、研究時間を増やしていきました。

その結果、私は体調を崩しました。貧血で倒れました。これが 2 月末のことです。人生何回も貧血で倒れているので、「またか」と思いました。しかし、うずくまっている 30 分間で、反省しました。

過去、私は留年をして、沢山の方々にご迷惑をおかけしています。それと同じことを、繰り返そうとしていることに、そのときようやく、気がつきました。

こういう状況なので、「寝食を忘れて研究をする」は、少なくとも私は、やってはいけません。それが数学または理系全般における「悪しき美徳」であることは、私もよくわかっております。確かに、たくさん研究をすると、研究成果はあがります。しかし、倒れてしまうと、少なくない期間を休養に充てることになります。結果、休養に充てることになってしまった期間であがるはずの成果を失います。この「取引」は、たいてい損です。

研究時間を増やしすぎないための「対策」

対策を練ることにしました。

まず、上述の経緯を見れば分かる通り、私が勝手に研究時間を増やしていったので、倒れたことと現在の勤め先は全く関係ありません。「自分で数学をやっているんだ」と言って、研究や勉強をしていた私が悪いのは明白です。

実際、私が倒れたことを、勤め先の沢山の方々は心配して下さいました。以下の「対策」は、全ての階層で、なんの反対もなく了承されました。

対策その 1

対策その 1 として、研究時間を月 200 時間以内に制限しています。研究時間は全て、労働時間として、記録することにしました。

キリの良いように 200 時間としていますが、実際はそれよりも少なくなる予定です。というのも、残業時間を月 45 時間以内に収めることを原則としているためです。この基準は、破ったからと言って直ちに規則に反するわけではありません。しかし、守るように求められています。この部分を詳らかにするのは控えます。

対策その 2

対策その 2 として、月の勤務日数を 19 日に制限しています。それ以上の稼働日がある場合は、各種休暇を使用します。

私がどれだけ頑張っても、 1 日あたりの研究時間の上限は、はっきりとあります。眠くなったら寝るからです。こうすると、残業時間を月 45 時間を超えることは、非常に難しくなります。

対策その 3

具体的なことはここでは絶対書けませんが、 2023 年度から 2025 年度までの計画を見直しています。このうち 2023 年度と 2024 年度の計画は、了承されています。無理のないスケジュールで研究開発をやっていきます。

ありがたいことに、やっていることはほぼ全て数学なので、体の負担は低めです。目標が適切であり、研究時間が抑えられれば、体調不良になる可能性は低くなります。

まとめ

要するに、解析学でやるような不等式評価です。

  • 「1 ヶ月あたりの研究時間 $\leq 200$ 時間」
    • その十分条件「1 ヶ月あたりの残業時間 $\leq 45$ 時間」
      • さらにその十分条件「1 ヶ月あたりの勤務日数 $\leq 19$ 日」

そこから導かれる計画を立てています。

以上を 2023 年 3 月から試運転し、 4 月から現在まで継続しています。

誰しもが通る道

私が「研究時間を月 200 時間以内に抑える」と書くと、例えば、数理科学研究科の構成員たちの一部の心無い人達はバカにしてくるでしょう。「その倍くらいやらないと、研究成果はあがらんぞ」と批判されます。私はあの底辺社会にいたので、温度感はわかります。

しかし、その人は、いつまでも、月 400 時間も数学の研究ができるわけではありません。学生時代に、月 400 時間、数学の研究、しかも大抵は自分で見つけた課題ではない誰かのお手伝い、をしたとして、きらびやかな成果を一発あげたとします。大いに称賛され、成功体験となるでしょう。しかし、いつしか、その時間は月 200 時間にまで減り、そして、演習や講義や雑務に忙しくなり、私生活も忙しくなり、月 100 時間に減ってもおかしくありません。むしろ 200 時間もの研究時間を確保するのは、至難の業になってきます。

こうして、批判される方にまわり、戦略を編み出す必要性が出てきます。しかし、容易ではありません。安直な順応方法では、基礎的な勉強を省略することになってしまいます。すなわち、自分の過去の手法を用いた「再放送」や、自分以外の人にやってもらうか、共著戦略に走るしか方法がなくなってきます。もしかしたら、他の理系の分野ならそれでもいいのかもしれません。しかし、数学の研究において、基礎的な勉強は、競争力の源泉です。過去の栄光が大きければ大きいほど、「あの人は、学生時代が人生の頂点の、一発屋だった」と言われるようになるのではないでしょうか。自分より下の世代の人の目は、ごまかせないものです。そうしてますます、過去の栄光にすがるようになるという。読者の方も、そうなった方や、そうなりそうになっている方を、見たことがあるのではないでしょうか。

もちろん、数学だけが人生ではありません。だからこそ、研究時間や研究成果を他人と競うのは無意味だと考えます。

そもそも、私は今後、学校に行きません。学校の先生の方ではなく、グループ会社や、お客様や、資本主義社会の方を向いて、研究開発を推進していきます。

ビデオゲームの話

以下、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のネタバレを含みます

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』の進捗

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、私がやってきたゲームの中で、もしかしたら、一番面白いゲームなのではないかと思っております。

現在は、上空を端から端まで探索することと、地底のマップを埋めることを目標にしております。発売から 2 週間経ちましたが、まだ地底のマップを埋めきれていません。このことに、驚いています。

上空の遊びはとても面白いです。私は最初に戦ったグリオークがキンググリオークであるという奇妙なことになりましたが、ここまで苛烈な攻撃をしてくれるのは、やりがいを感じました。本作は、戦闘が私好みで、とても面白く感じます。

地底は、これそのものがやりこみ要素です。オープンワールドで、暗闇の中を探索するというのは、挑戦的なゲームといえます。前作でも、わずかにありましたが、本作で、地上と同じだけの広さを持つマップで行われるとは想定していませんでした。

今後、暗闇を舞台としたオープンワールドのゲームが登場することでしょう。ただし、『ティアーズ オブ ザ キングダム』は相当な工夫が凝らされているため、はじめてそれがゲームとして成立していると感じます。

まず、地上のマップと明確な関連があります。探索を進めると、水辺が壁に対応していること、山が谷に対応していること、街が廃坑に対応していること、そして、祠が根に対応していることががわかるので、地上のマップがある程度埋まっていれば、ルートの見当がつきます。これはゲームの構造そのものを利用したヒントです。

また、地底は地上のヒントを提供することにも繋がっています。地上のマップはすぐに埋まりますが、その後、祠の場所は改めて探索することになります。地下は、マップが埋まっていない場所に根があるのは確実ですので、根が発見できます。結果、地上で巧妙に隠されていた祠の $(x, y)$ 座標を知ることができます。ただし $z$ 座標はわからないままです。

地上のマップとの関連がわかったので、地底をやる気になっています。その頃には、リンクのステータスや装備も整っているので、地下の強敵に挑むだけの準備もできています。

これが今の状況です。地上の探索は、まだまだ残っています。まだ、ノーヒントで頑張っています。多分、コログ以外は、ノーヒントでできるような気がしていますが、果たしてそうなるでしょうか。

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』との、個人的な比較

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』を、発売日の日付が変わった瞬間から 6 日間、毎日毎日、来る日も来る日も、ひたすらやっていました。これを可能となったのは、たくさんの人のおかげであったことは、書いておきたいところです。

前作である『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、院生時代における、私が頑張った最後のゲームになりました。

あの頃は、学校の先生としてやっていけるかどうかでいうと、やっていけそうという自信はありました。しかし、教員が学生や同僚の悪口を言って楽しんでいる様子や、差別やハラスメントが平然と行われている様子を鑑み、こんな世界に一生を費やすのでいいのかと、思い悩んでいました。

学校に残れば、数学もやれるし、ゲームはやれそうです。しかし、こんな人間に自分もなりたいのかと、こんな人生でいいのかと。そもそも本当に、学校の先生に私もなりたいのかと。

あれから 6 年。私は、好きなだけゲームもやれているだけでなく、数学をやることそのものが仕事になっています。そしてその 2 つで、ほぼすべての時間が回っています。周りの人は、全員、協力的です。私の仕事の邪魔をする人も、ゲームの邪魔をする人も、 1 人もいません。私の好きなようにやることを、支援してくださいます。

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、あまり楽しめた記憶がありません。私自身 250 時間くらいやりましたし、そのくらいには楽しめましたが、少なくとも世間が絶賛するようなゲームではないと思っていました。私自身はゲーマーというほどでもないですが、オープンワールドのゲームを他にもやっていたので、そんなに突出しているかと思っていました。

しかし『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』をやってみて、その完成度に驚きました。私の予想よりも、ずっと面白く感じました。

これは、もちろん、前作の要素を極点まで磨き切っているためでもあります。しかし、それだけではなく、私の環境の変化も大きいのではないかと、予想しております。

もしも私が、学校の先生になるんだと言いながら、先生方の好きそうな数学の研究成果を出すことに没頭していたら、あの底辺社会から一生抜け出せませんでした。その結果、今頃、私は、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』をやっても、今ほど楽しく感じていなかったことでしょう。

現在の私をとりまく全ての人たちに、心より、感謝しております。本当に、ありがとうございます。毎日、感謝の気持ちを持ちながら、なんの不満もなく、生きております。