『龍が如く 8 外伝 Pirates in Hawaii』の感想
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もはや『龍が如く』シリーズの新作が発売になるたびに、感想を上げるのが恒例になっている。なので今回もそうする。
ネタバレはある。しかし、結末まで完全にネタバレをするわけではない。野暮なことはしたくない。
前提と基本情報
まず私の立場を明らかにする。
『0』『極 1』『極 2』『3』『4』『5』『6』『7』『7 外伝』『8』『維新! 極』を、少なくともストーリークリアまでやっている。いくつかはトロフィーコンプリートまたは実績全解除をしている。しかし、やりこみ勢ではない。ムービーシーンはスキップせずに全部見ているので、少々忘れていることはあれど、シリーズのほぼ全体を理解しているはずである。ついでにいうと『JUDGE EYES』『LOST JUDGEMENT』も同様である。
本作は、実績全解除までやった。ゲーム時間では 31 時間でエンディングを迎えている。いくつかの収集要素をやり切っていないが、ちょうどエンディングを迎えたので、ここで感想を書く次第である。
全体の結論
- ストーリーはとてもよい。全体として明るい雰囲気で開始し、最後も大団円で締められる。それでいて、次回作へ続くことが明示されている。
- ジャンプアクションも非常によい。真島を強化することで、スピーディーで快適なアクションが決められるようにできている。ジャンプ可能作品 1 作目から完璧なものを提供することに成功している。
- シリーズ恒例の大型ミニゲームの体験がよくない。ストーリーが短めであることもあり、ゲーム体験全体のうち、ミニゲームの悪い印象を、相対的に大きく捉えてしまう。ネガティブに感じる人は多そうである。プレイヤーの反応を見て、次回作以降、改善を施す必要があるだろう。
良い点
明るく、メッセージ性もあるストーリー
本作は海賊の話であり、しかも真島が船長である。『龍が如く』シリーズのファンは、シリーズの味わいが変化する心配を少なからずしたであろう。蓋を開けてみると、この点については、杞憂であった。
『8』で、主人公となる桐生が、事実上、最後の仕事をした。桐生の役目は、極道の過去を請け負って去ることであった。そして、春日たちは、未来に向かって進むことになった。
『8 外伝』も、エピローグで、このストーリーラインに合流することになる。真島は還暦を迎えた。真島が未来を託すのが、今回登場する少年・ノアである。「子どもたちには大きな夢を」「子どもたちの期待に応えるのが大人の役目」という話が、真島の口から、繰り返し語られ、海賊として冒険をする。加えて、ノアとジェイソンたちの親子愛という要素が組み込まれている。
子どもたちの夢、親子愛という要素は、話として単体で成立するような規模に収まっている。今後の本線には、これらの要素は過剰には影響しないであろう。あくまで『8 外伝』は外伝である。それゆえに、成功している。オープニングとエンディングは、その象徴である。ファンにも評判が良いことが期待される。
ジャンプアクションも良好
次に、『龍が如く』シリーズのファンが気になっていたであろう要素は、ジャンプアクションであろう。これもシリーズ初めての試みである。しかし、そこは、アクションゲームの達人たちが仕上げてきている。
現代において、 3 人称の 3D アクションゲームでは、スピードが重要である。本作は 2025 年に出す以上、一層のハイスピードが求められる。しかし『龍が如く』シリーズの基本は、ヤクザ同士の戦いである。ガードとスウェイで相手の出方を伺い、ヒット・アンド・アウェイな戦い方を原則とする。この部分から逸脱すると、シリーズのファンからこれじゃないと言われそうである。変化がないもの繰り出すと、他のゲームに慣れたアクションゲームプレイヤーが物足りなさを感じるであろう。このジレンマを、どのように解消するか。本作の解決策は、以下のように整理される。
- 本作のスウェイ・ガード=通常のゲームのパリィ(『ゼンゼロ』だと極限支援)
- 本作のジャンプアクション=過去作のヒートアクション=通常のゲームのスキル技(『ゼンゼロ』だと特殊スキル)
- 本作のヒートアクション=通常のゲームの必殺技(『ゼンゼロ』だと終結スキル)
はじめのうちは、真島がジャンプで回避するだけのような印象を受ける。しかし、真島を最後まで強化すると、徐々に上のように感じられるようになる。
ジャンプアクションを取り入れ、それを中心に据えることで、現代的なアクションゲームへと進化している。それでいて『龍が如く』シリーズの戦い方を要求されるので、過去作のファンも全く違和感を感じないだろう。プレイヤー全体の意識を、ハイスピードアクション寄りに変革することに、成功したと思われる。
現代のアクションゲームのトレンドに沿っていて、攻撃の後スキが非常に短い。私は違和感なく戦えた。
ヒートゲージが 1 本しかないのは、普段の高速な演出との調和を取るためであろう。バランスを取った結果と推測する。あえていうなら、ヒートアクションの発動タイミングがシビアであるので、もっとヒートアクションの入力時間を長くしてもよい。あるいは、制作者の意図としては、発動タイミングを覚えてほしいのかもしれない。実際、私はよく使うアクションは覚えた。
気になる点
ミニゲームは成功しているとは言い難い
本作は、ミニゲームの体験が非常によくない。どれも難点がある。
「デビルフラッグス」
本作の大型ミニゲームは、「デビルフラッグス」である。
海賊船を操作し、航海をする。途中で、大砲等を用いた海戦を行う。船を大破させたタイミングで、集団で敵の船に乗り込み、集団戦をする。島についたら、お宝をゲットするべく最深部に向かい、バトルをする。
こうやって書くと『アサシンクリード 4』以降の海戦のように面白そうであろう。しかし、実際は、苦痛を伴うものになっている。そもそも、高速化が進む現代のアクションゲームで、遅い船で船旅をやるのは、それだけで大変である。しかも、大洋のマップが 9 つもあるから、「まだ終わらないの」という気持ちになる。海戦も、小回りの効かない船で、ゆっくりとした戦いをする。島の探検も、敵の強さが異なるだけで、同じことの繰り返しである。
私は「デビルフラッグス」のコンプリートに合計 7 時間かかっている。真島を強化するために、しかたなくやった。
調整不足も目立つ。私は亜門戦までやったが、そこまでやっても、ロケットランチャーや煙幕・修理の決定的な使用機会を見出すことができなかった。 2 つある楽園のマップは、使いまわしであった。
「パイレーツコロシアム」
今回のコロシアム要素。クエストを選んで、海戦 and/or 集団戦を繰り返すモードである。「デビルフラッグス」と同じことを別の形でさせるだけなので、芸が無いといえる。報酬も、「パイレーツコロシアム」でなければ配布できないようなものは、見いだせなかった。
「デビルフラッグス」があるならば、「パイレーツコロシアム」はいらなかったと言われても、仕方がないように感じられる。差別化要素があるよう、もっと磨くべきである。また、全体の分量も、調整するべきである。
賞金首
全員を倒したが、面白さを見いだせなかった。 80 人以上倒すと、同じことの繰り返しのように思えてしまった。
本作のボリュームだと 20 人くらいでよいのではないか。賞金首の報酬はゲーム内通貨である。各人の賞金を 4 倍にして、人数を 1/4 にすることはできるはずである。
ミニゲームは、「全体」の中に位置づけられるべき
もともと『龍が如く』シリーズは、大型のミニゲームを売りにしている。『0』や『極 2』のキャバクラ経営ゲームは、最大級の成功といえる。ゆえに、『8 外伝』でも、大型のミニゲームがあること自体は、ファンも期待するところである。そこは、よい。しかし、本作のミニゲームは、十分には練られていない。プレイヤーの体験はよくない。
ミニゲームは育成要素にも関わっているので、プレイヤーは体験の悪いミニゲームにお付き合いを要求される。ここに、メインシナリオの短さも相まって、ミニゲームがメインシナリオよりも大きな印象をプレイヤーに与えてしまう。私自身、真島の “修行” に、全体の半分以上の労力を割いているように感じた。実際、時間単位で見るとさほど間違いではない。『FINAL FANTASY VII REBIRTH』でもミニゲームの多さを感じた。この点は、うまくできないものか。
近年成功しているゲームでは、大型ミニゲームはあくまでメインシナリオの派生物であり、主従関係ははっきりしている。例えば HoYoverse 作品は全てそうなっている。『崩壊:スターレイル』のメインシナリオ更新分よりもイベントが大きいということはありえない。どのようなコンテンツをどの分量で提供すれば、ユーザーの喜びは最大になるか。そのバランスを、誰かが取れるとよいと感じる。
その他
「ミナト区系女子」イベント
本作のキャバクラに相当するものが、これである。メモしておきたい。
- 女性陣は CG のみならず、実写で登場。『7 外伝』の実写キャバクラの進化系といえる。
- マサルのモデルとなった秋山竜次さんも実写に登場し、マサルを演じる。
- バラエティ番組のコントのようなものが繰り広げられ、マサルがフラレる。
今回のキャバクラ相当物の主人公は、真島ではなく、マサルである。これは素晴らしいアイデアである。
真島は女性ファンからの人気が高く、ガチ恋勢が結構多い。それを見越した判断であったと予想している。このアイデアにより、秋山さん自身も実写に登場する。コメディアンであることを活かして、面白おかしくフラレている。「アイデアというのは、複数の問題を一気に解決するものである」という、いつものフレーズが思い浮かぶ。
1 回限りのネタであるのは、欠点である。次回作も芸人さんが出演し、コントでフラレるのであれば、今度は受け入れられないだろう。
翻って鑑みるに、『龍が如く』シリーズのキャバクラ要素は、今後どのように進化させるか、悩ましい部分である。最大の問題点は、現代に合わせてゲームスピードを上げることが難しいという点である。
俳優さんについて
どの方も上手かった。ファーストサマーウイカさんのノアは完璧であり、本職の 1 つである歌も上手であった。他の方の演技も素晴らしかった。どの方も、役柄に違和感なく適合していた。俳優さんのファンの方は、最後までやっていただきたい。
ゲームプレイの状況
2/21 に発売。 2/22 - 2/25 までの 4 日間でやった。 2/25 は平日だったが、休暇にした。私の予定では 2/22 - 2/24 の 3 日間でやる予定だったが、「デビルフラッグス」・「パイレーツコロシアム」・賞金首で消耗してしまったので、最終的には 4 日間かかった。