6 月 25 日分のレポート問題の略解と講評【2018 年度 実解析学演習 I】

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準備

配点

問題 配点
32 50
33 50

問題 32 は、初学の段階だと、自力で思いつくのは結構難しいと思います。答えは重要なので覚えておきましょう。問題 33 も難しいです。問題の背景も書いておきます。

どちらも難しい問題だけど、問題数少ないから自力で試行錯誤してみよという出題意図かと思います。

そもそも提出していない人が多かったです。やはり難しかったでしょうか。

略解と講評

問題 32

略解

まず $I_0 = [0, 1]$, $I_1 = [0, 1/2]$, $I_2 = [1/2, 1]$, $I_3 = [0, 1/3]$, $I_4 = [1/3, 2/3]$, $I_5 = [2/3, 1]$, $I_6 = [0, 1/4]$, $\dots$ のように、区間を $n$ 等分して左から $n$ 個並べていき番号をつけていくのを繰り返します。あとは $f_n = \chi_{I_n}$ とするだけです。性質を充たしているのは自分で確かめてください。

コメント

この例は

  • 関数列 ${ f_n }$ が $L^1$ 収束 ( $1$ 次平均収束)していたとしても概収束しているとは限らない

ことを示す例です。また、その逆

  • 関数列 ${ f_n }$ が 概収束していたとしても $L^1$ 収束しているとは限らない

も成り立ちません。皆さんご存知のあの例があります。ただし、

  • 関数列 ${ f_n }$ が $L^1$ 収束するならば、 部分列を取ることで 概収束するようにできる

は成立します。私は学部生時代「部分列ってなんのためにとるの」と思っていましたが、微分方程式論に進むと重要になります。微分方程式の解が $L^p$ 収束での極限として得られるのですが、そのときに部分列を取ると概収束もするので、性質がよくなって便利、というわけです。

採点結果

間違いを書いた人はいませんでした。難しい構成をした人も、結局上の構成と本質的には変わりませんでした。略解で挙げた例は記憶もしやすいですのでオススメです。

問題 33

略解

(1) も (2) も実は似たようなものです。 (1) から解きます。 $f(x) = \sin(x^{2k})/x^{2k+1}$ とします。 部分積分 により、

\[ \int_c^\infty f(x) \sin nx dx = \left[ -\frac{\cos nx}{n} f(x) \right]_c^\infty - \int_c^\infty - \frac{\cos nx}{n} f’(x) dx \]

が得られます。前者は $f(c) \cos nc / n $ ですから $n \to \infty$ のとき $0$ に収束します。後者は $f’$ を具体的に計算して $\lvert \sin y \rvert \leq 1$ などを使用すれば、結局、優収束定理から $0$ になります。ここの計算は簡単ですが、先週書いたことも参照してください。答えは $0$ です。

(2) はヒントのように分けると、第 $3$ 項の極限は直ちに $0$ 、第 $1$ 項の極限も 同様に計算 して $0$ 、最後に第 $2$ 項の極限は、変数変換により「既知とする」の積分になり $\pi$ になります。よって答えは $\pi$ です。

採点結果

初めてのことですが、満点とった人はいませんでした。非常に難しかったと思います。間違いをすべて指摘しておきます。

  • (2) の第 $1$ 項の被積分関数は偶関数であり、奇関数ではありません。
  • (1), (2) の第 $1$ 項には優収束定理を用いますが、直接各点収束先を求めることは困難です。例えば積和公式を使ってくれた人もいますが、 $\lim_{n \to \infty} (\cos(nx + x^{2k}) - \cos(nx - x^{2k}))$ が概収束するか、今一度よく考えてください。
  • 同じく $\lim_{n \to \infty} \sin nx / x$ も収束しません。
  • (1) で $y = nx$ といきなり置換しても収束は明らかにはなりません。
  • 積分の三角不等式 \[ \left\lvert \int f d\mu \right\rvert \leq \int \lvert f \rvert d\mu \] を使いたい場合は、被積分函数をすべて絶対値で囲う必要があります。例えば $\sin nx$ は符号変化するので、ここだけ積分することはできません。
  • よく出るテクニックですが、 $\lvert 2k \cos y - (2k+1) \cos y \rvert \leq 4k + 1$ が安全な評価方法です。これは $\lvert \cos y \rvert, \lvert \sin y \rvert \leq 1$ を使っています。もちろんどちらの等号も同時に成立することはありませんが、結論は正しいです。 $4k + 1$ で抑えているのは「ベストの定数」ではないので高校数学風にいうと不満の残るところではありますが、数学的な価値は変わりません。前回の記事も参照してください。
  • LaTeX で絶対値を取りたい場合は \lvert\rvert で囲ってください。これなら \left, right も動きます。 | は使ってはなりません。「なんと細かいこと、見た目が良ければいいだろ」と思うかもしれませんが、後者はカッコとして認識されないので、 LaTeX の見た目は、ずれます。人間一度論文を書いてしまうと自信がついてしまうので、修正は困難です。 LaTeX の正しい作法を学ぶなら今のうちです。

問題の背景

次の定理を知っているとこの問題はほぼ一瞬です。

リーマン・ルベーグの定理: $d = 1, 2, \dots$ とする。 $f \in L^1(\mathbb{R}^d)$ とする。このとき、 \[ \hat{f}(\xi) = \int_{\mathbb{R}^d} f(x) e^{ix \cdot \xi} dx \tag{1} \] は連続関数であり、かつ、 \[ \lim_{\lvert \xi \rvert \to \infty} \hat{f}(\xi) = 0 \tag{2} \] が成立する。

(1), (2) の虚部を取れば今回の問題でやったことがすぐに従います。というのも、 $f(x) = \sin(x^{2k})/x^{2k+1}$ とすると $\lvert f(x) \rvert \leq 1/x^{2k+1} = O(x^{-2k-1})$ であり $[c, \infty]$ で可積分です。一方 $g(x) = (\sin(x^{2k}) - x^{2k})/x^{2k + 1}$ とすると今度はテイラーの定理により、 $\sin y = y + O(y^3)$ であるから $\lvert g(x) \rvert = O(x^{4k - 1})$ であり有界区間で可積分です。だからリーマン・ルベーグの定理を適用できます。

そこでこういう疑問が生まれます。「リーマン・ルベーグの定理の証明を援用することにより、この問題が解けるのではないか」という疑問です。結論からいうと、連続関数のところは優収束定理で一発ですが、 (2) の式は現在の受講生の知識では難しいかと思います。標準的な証明方法では次の 3 つの事実を使います。

  1. $C_0^\infty(\mathbb{R}^d) \subset L^p(\mathbb{R}^d)$ が $1 \leq p < \infty$ で稠密であること。
  2. $C_0^\infty(\mathbb{R}^d) \subset \mathcal{S}(\mathbb{R}^d)$ (急減少関数全体の空間)であること。
  3. $f \in \mathcal{S}(\mathbb{R}^d)$ に対し $\hat{f} \in \mathcal{S}(\mathbb{R}^d)$ であること。より詳しく言うとフーリエ変換 $\mathcal{F}$ は $\mathcal{S}(\mathbb{R}^d)$ 上の全単射であること。

このうち 2. は急減少関数の定義から即従います。一方 1. と 3. は大掛かりな道具が必要です。 1. は軟化子を 1 種類は導入する必要があります。 3. は先週の「積分記号下での微分」などを使うと出ます。フーリエ逆変換まで定義してからこれらを示すのが普通です。カリキュラムを見ると A セメスターの最後までには扱われるようです1。だから 6 ヶ月後には皆さんこの定理は理解しているはずです。

今回の問題は $f, g$ はどちらも $C^1$ 級なので、部分積分で代用する答案を略解としました。

ナビゲーション

この教材は、 2018 年度東京大学教養学部統合自然科学科専門科目「実解析学演習 I」のために執筆されたものです。 TA が書いた非公式のものです。 他の回は実解析学演習 I #real-analysis-exercise-1-2018から御覧ください。

  1. ちなみに私の大学院での研究でフーリエ変換を使ったことは一度もありません。一部の「研究者」が声高に叫ぶ「必要なことだけ勉強すればいい、使わない知識は勉強するだけ無駄」の論理で言えば、フーリエ変換は無駄な知識ということになります。しかし、フーリエ変換を必要になってから勉強すると、こんな基本的な定理を証明するためにも、これだけの知識が必要になります。必要ないと省略した部分を、道なりに勉強する必要が出てきます。結局泥縄式は、道なりに進むよりも数倍の時間を浪費します。実解析学は、そういう傾向が顕著です。 

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