単位が危ない人向けのここを勉強しろ【2018 年度 実解析学演習 I】

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もう添削課題がないらしいので、最後にこれを述べて終わりにしたいと思います。

演習のレポートで評定 B や C が毎週ついている人は、そのまま期末試験に突入すると単位を失う可能性があります(多分試験だと思いますが、もしかしてレポートですかね?)。ここを優先的に勉強しろというところを書いておきます。

皆さんお疲れ様でした。解析学好きになったら A セメスターの講義も受講してみてください。

なぜこれを書くか

ルベーグ積分論は、積分を定義するために必要な道具立てが大きく、前半はその道具立ての講義で費やされます。そのため、実践的に重要な項目が後半に集中しています。例えば GW 前までの前半で息切れして後半を逃すと、重要なことを全然勉強しない事になります。これはもったいないです。せっかくルベーグ積分を大学で勉強したのだから、途中よくわからなかった人にも実りがあるとよいと思います。

そこで、全部講義を終えた段階で、ルベーグ積分論のどこが重要で、 その帰結として どこが試験で狙われやすいかを書いておきます。

大学において、教員が試験をするのは、わかってほしいところをわかっているかどうか見るためです。皆さんに苦痛を与えたいからではありません。もちろんルベーグ積分論の「全て」をわかっておくのがベストですが、(私を含めて)そうでない人が圧倒的でしょう。特に、単位が取れるかどうかのラインの人を、水準以上に押し上げるのは、重要な事だと考えています。

今サッカー W 杯が行われていますが、予選リーグ敗退濃厚と言われた日本チームは決勝トーナメントに進みましたし、前回優勝のドイツは韓国に劇的な敗北をし予選リーグ敗退しました。数日後の未来のことですら、正確に予想するのは困難であるということです。これが数十年というスパンならば、もはや誰にもわかりません。例え数学をメインに扱うことはなくとも、人生のある時点でルベーグ積分の勉強の成果が発揮される可能性はあるのです。そうなれば、国が税金をかけて教育した意味があると言えます。

免責事項

これらを網羅したからと言って単位がくるとは限りませんし、無保証です。しかしルベーグ積分の講義でここがわかって欲しいと思うところは、おおよそ全ての数学者、全世界共通です。だからそういうところを書いています1

特に、これ以外の項目を勉強するなというネガティブな意味では絶対にありません。数学は好きなだけ勉強すれば良いです。

以下では「可測である」「可測ではない」と書かない限りは可測関数・可測集合とします。どの意味で可測かも書きません。このへんは自分でチェック。

本文

逃したら終わりな項目

以下にあることを 1 つでも逃した場合、なんのためにルベーグ積分の勉強をしたんだという気持ちになり、不合格にしたくなると思われます。

  • 一般の測度空間の定義
    • 正確に書けること。
  • 優収束定理
    • 定理が正確に書けること。
    • 定理が適用できること。特に $\lvert f_n \rvert$ を $n$ によらない可積分関数 $g$ で抑えること。
    • 重要度は一段階下がるが、パラメータ付き積分の微分(数回前に書いた)もわかっておくとよろしい。
  • Fatou の補題
    • 定理が正確に書けること。特に正値性、不等号の向き。
  • 単調収束定理
    • 定理が正確に書けること。
    • 定理が適用できること。特に正値性。
    • ちなみに単調収束定理は、収束先が可積分関数である場合は、優収束定理で代用が可能である。価値があるのは「$\infty = \infty$」の場合。
  • Fubini の定理
    • 定理が正確に書けること。特に、証明は覚えている必要はない。
    • 定理が適用できること。正値関数の場合は自動的に成立。そうでない場合は自分で絶対値をとる。添削課題にならなかったので、自分で答案の述べ方を確認してください。
  • 1 年生の微分積分の具体的な計算力
    • 一概には言えない。単位を取らせるための問題は、抽象的な設定だけでなく、具体的な設定で聞いてくることが多い。このときに具体的な計算を正確に遂行できないと、いくら上記項目がわかっていても、得点に結びつかず、不合格になる可能性がある。落ち着いて計算する。複雑で愚直な計算も厭わないように。時間に余裕があれば、確かめの計算もする。

単位を取るために必要な項目

程度にもよりますが、以下の全てがわかっていることが答案から確認できれば、よほど厳しい教員以外は、そうそう不合格にはしないでしょう(多分)。

  • 収束定理の仮定を落とした時の反例
    • 上の 3 つの定理に関しては、全部覚えておく。
  • 収束定理の証明の一部
    • 単調収束定理から Fatou の補題。 $g_n = \inf_{k \geq n} f_k$ に単調収束定理を適用する。
    • Fatou の補題から優収束定理。 $\{ f - f_n \}$ と $\{ f + f_n \}$ に Fatou の補題を適用する。
    • これらをわずかに変更するとそのまま答えになるような問題も出しやすい。
  • ルベーグ可測関数
    • 定義が書けること。
    • 十分条件がいくつか言えること。例えば連続関数は可測関数である。
  • ルベーグ可測集合
    • 十分条件がいくつか言えること。例えば開集合は可測集合である。
    • 間違って非可算無限個の和集合や共通部分を取らないように。
  • 一般の位相空間でのコンパクト集合の定義
    • 仮に集合と位相の講義であれば、「逃したら終わり」の項目に含まれる項目である。
    • その前提として、一階述語論理がわかる必要がある。特に $\forall$ や $\exists$ を含む命題の否定を機械的に取れるように。
  • $\mathbb{R}^n$ での開集合・閉集合の定義
    • バラエティに富んでいるので、これが重要な問題だとはなかなか言えない。少なくとも「定義から直接示せ」ができるように。
    • (余裕があれば) 一般の位相空間論の知識はそのまま使え、問題によってはショートカットになる場合もある。例えば連続写像の定義。

今回の範囲には含まれていないものの、次の項目も出しやすい。

  • $L^p$ 空間の定義、ノルム
    • $L^p$ 空間の元だが、 $L^q$ 空間の元でないもの。
      • (これは今回の範囲でも出題自体は可能である。 $\lvert x \rvert^{-k}$ を切り取る)
    • 畳み込みとの関係。
  • Hölder の不等式、 Young の不等式
    • $f, g \in L^2$ のとき $fg \in L^1$ などを示す。

その他重要度の高い項目

あとは適当に書きます。

  • ルベーグ外測度
    • 測度 $0$ 集合の証明。特に $\epsilon > 0$ の分割。
    • 測度 $0$ 集合の例。 $\mathbb{Q} \subset \mathbb{R}$ など。
  • $\mathbb{R}^n$ 上のある関数が可積分関数であることを証明する技術
    • 数回前に書いた。
  • ルベーグ測度の位相的性質
    • 特に、ルベーグ可測集合を開集合や閉集合で近似するやつ。
  • ルベーグ可測でない集合の存在を仮定してルベーグ可測でない関数を作る方法
    • だいぶ前に書いた。

今回の範囲には含まれていないものの、次の項目も出しやすい。

  • $C_0^\infty(\mathbb{R}^n) \subset L^p(\mathbb{R}^n)$ ($1 \leq p < \infty$) が稠密であること
    • 非常に簡単な性質を $C_0^\infty$ で証明させて、 $L^p$ に拡張するのがよくある。

その他

一般的な注意ですが、勉強の仕方や答案に書き方に気をつけてください。数学の場合「自分ではこの試験うまくいったはずなのに、評定が振るわない」という場合は、間違った事項を頭に入れているか、または答案が適切でないかのどちらかです。

  1. こういう文章を書くと、検索してわざわざこのページを見に来た頭の固い数学者の先生から怒られるかもしれないが、なぜ試験で点数を取ると怒ったり嫌味を言ったりするのか、私には一生わからんことです。そんなに学生の教育が嫌なら、たくさんの若手が余儀無くされているように、身銭を切って研究員になって一生数学の研究に打ち込めば良いでしょう。 

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