6 月 18 日分のレポート問題の略解と講評【2018 年度 実解析学演習 I】

更新日時:

準備

私の体調が悪くて、まだ答案を回収できていないので、先に解答だけお見せしておきます。

配点

問題 配点
29 40
30 40
31 20

問題 29 は講義で省略されたので演習問題に入っていると思われますが、本来なら講義で扱っておかしくない定理です。これは覚えているべきです。詳しく書いておきます。

略解と講評

問題 29

まともなルベーグ積分の本にはそのまま書いているはずですが、検索しにくいでしょうから、完全な解答を書いておきます。

解答

$\alpha \in (a, b)$ とする。 $h \in \mathbb{R}$ は $\alpha + h \in (a, b)$ を充たすものとする。 $x \in X$ とする。このとき、 $[\alpha, \alpha + h]$ 上の関数 $\beta \mapsto f(x, \beta)$ は $[\alpha, \alpha + h]$ 上連続で、 $(\alpha, \alpha + h)$ 上微分可能である。よって $\alpha, h$ に依存する $0 \leq \theta \leq 1$ が存在し、 \[ \frac{f(x, \alpha + h) - f(x, \alpha)}{h} = \frac{\partial}{\partial \alpha} f(x, \alpha + \theta h) \] が成立する。よって、 \[ \left \lvert \frac{f(x, \alpha + h) - f(x, \alpha)}{h} \right \rvert \leq g(x) \] である。したがって、優収束定理より、次式が成立する。 \[ \begin{align} \lim_{h \to 0} \frac{F(x, \alpha + h) - F(x, \alpha)}{h} &= \lim_{h \to 0} \int_X \frac{f(x, \alpha + h) - f(x, \alpha)}{h} d\mu(x) \\ &= \int_X \lim_{h \to 0} \frac{f(x, \alpha + h) - f(x, \alpha)}{h} d\mu(x) \\ &= \int_X \frac{\partial}{\partial \alpha} f(x, \alpha) d\mu(x). \end{align} \] したがって、 $F(\alpha)$ は微分可能であり、次式が成立する。 \[ F’(\alpha) = \int_X \frac{\partial}{\partial \alpha} f(x, \alpha) d\mu(x). \]

コメント

定理のポイントを説明しておきます。

この定理は名前はありませんが、ルベーグ積分をまともに勉強した人なら全員が知っています。そこで、定理を適用する際に答案をどうやって書くかが悩ましいのですが、私がいつもやっている方法をご紹介しておきます(元ネタは数理科学研究科の某教授)。まず「形式的に微分と積分を交換すると」と言ってから、いきなり結論の式を書きます。その後被積分関数の絶対値を取り出し、 $\alpha$ に依らない可積分関数 $g(x)$ で抑えてみせます。「よって、この交換は正当化される」と言ってフィニッシュします。

$(a, b)$ 上に一様に可積分関数 $g(x)$ を取るのが最大のポイントですが、実践的には取れない場合があります。この場合でも、ある区間 $J \subset (a, b)$ に限ると、 $g(x)$ が取れる場合があります。すると結論は $\alpha \in J$ で成立します。このことを利用すると、結局 $(a, b)$ 上で結論を得ることができる場合があります。少し具体的にいうと、例えば $(a, b) = (0, \infty)$ であり、 $(0, \infty)$ 上で $g(x)$ が取れないものの、任意の $\epsilon > 0$ に対して $(\epsilon, \infty)$ 上で ($\epsilon$ に依存する) 可積分関数 $g(x)$ が取れる場合があります。この場合結論は $(\epsilon, \infty)$ 上で成立しますが、 $\epsilon > 0$ は任意なので結局結論は $(0, \infty)$ 上で成立します。もっと具体的に何かやってみたい方は $X = (0, \infty)$, $(a, b) = (0, \infty)$, $f(x, \alpha) = (e^{-\alpha x} \sin x) / x$ でやってみてください。

問題 30

略解

$n \in \mathbb{N}$ についての数学的帰納法で証明すればよろしいです。さっき書いた方法で答案を書くと非常にスムーズに進むでしょう。 $e^{-\lvert x \rvert}$ は多項式には遠くで必ず勝ちます。これは今回の答案でははっきりとした証明を書くべきです。具体的には $g(x)$ は遠くで $O(\lvert x \rvert^{-2})$ で実現できます。

コメント

$g(x)$ を取ることができない人がいると思います。可積分関数で抑える、または、可積分性を自分で確かめる一般的なヒントを書いておきます。

まず $\mathbb{R}^N$ 上で 可積分性が非自明であるのは次のどちらなのか をチェックします。どちらもかもしれません。また $R$ は共通して取らなくても、全部が覆われていればそれでよいです。

  • $R > 0$ が存在して $\lvert x \rvert > R$ の領域
  • $R > 0$ が存在して $\lvert x \rvert \leq R$ の領域

そして、極座標表示を用いて次に帰着させます。

\[ \begin{align} \int_R^\infty \frac{1}{r^k} dr &< \infty & (k > 1), \\ \int_0^R \frac{1}{r^k} dr &< \infty & (k < 1). \end{align} \]

この際、両者に どんなに大きい定数 $M > 0$ がかかっても結論は変わらない ことに注意してください。定数は大きいものにどんどん取り替えて構いません。高校までの数学の影響で、不等式の変形で等号成立するような最小の $M > 0$ を狙う人が時々出ますが、どんなに頑張っても数学的な価値は変わりませんので無駄な努力です。パラダイムが違いますので、この見方は意識的に改革しましょう。

今回の場合だと、まず後者の領域は、定数で抑えられます。このことを念頭に置いて前者から考えます。具体的には以下の通りにします。 $R > 0$ が存在し( $R > 0$ は実は任意にとることができる) $M > 0$ が存在し $\lvert x \rvert > R$ に対し $e^{- \lvert x \rvert} \leq M \lvert x \rvert^{-n-2}$ とできるので、 $\lvert x \rvert > R$ においては $\lvert (-ix)^n e^{-\lvert x \rvert} e^{-ix\xi} \rvert \leq M \lvert x \rvert^{-2}$ である。さらに $\lvert x \rvert \leq R$ においては $\lvert (-ix)^n e^{-\lvert x \rvert} e^{-ix\xi} \rvert$ は連続関数なので定数で抑えられる。以上により、 $\lvert (-ix)^n e^{-\lvert x \rvert} e^{-ix\xi} \rvert$ は $\xi$ に依らない $x \in \mathbb{R}$ 上の可積分関数で抑えられる。もちろん $-2$ のところが $-2018$ でも構いませんが、頭硬そうな先生の前で考究する際は控えましょう。

採点結果

  • 被積分関数の絶対値を抑えていない人は全く間違いです。
  • $n = 0, 1$ のみ正解している人は半分の点数としました。
    • $n = 0$ すら正しく抑えられていない答案は 0 点としました。
  • $\lvert (-ix)^n e^{-\lvert x \rvert} e^{-ix\xi} \rvert \leq \lvert x \rvert^n e^{-\lvert x \rvert}$ の右辺は $\xi$ によらない可積分関数であるのは事実ですが、理由づけが間違っている人が複数人いました。「有界だから」は間違いです。例えば $1$ は有界関数ですが、可積分ではありません。
    • このような答案があるので、 $\lvert x \rvert^n e^{-\lvert x \rvert}$ が可積分であることを自明とした答案は同じだけ減点しています。普段はそれでもいいかもしれませんので、これは少し厳しめです。この機会に上の方法は覚えておいて損はありません。
    • 上でコメントした方法に依るのがベストですが、部分積分を繰り返しても可積分性を示せます。このような答案は満点にしています。

問題 31

略解

$F(\xi) = 2 / (1 + \xi^2)$ を直接計算で求めれば良いです。ほとんどサービス問題です。正負で積分区間を分けて計算しましょう。

講評

上の問題も含めてそうですが、実部と虚部に分けて原始関数を求めて計算している人には驚きました。これだとサービス問題にはなりませんね。普通に計算すればただの指数関数の積分です。この講義の前に複素解析はやっているはずなので、遠回りもいいところです。減点はしていません。例えば \[ \int e^{ax} \cos bx dx \] の積分を計算する際には \[ \int e^{ax} e^{ibx} dx \] を計算して実部を取ればよろしいです。上のような答案は、この逆をしていることになります。高校までの原始関数の計算法が染み付いているのが原因かと思います。高校まででオイラーの公式は正当化できないので、前者の積分をするためには例の 2 回部分積分するしかないですけども、皆さんは複素解析までやっているので普通に指数関数の積分で良いはずです。

万が一「自分は複素解析やってないよ」という人は、フーリエ変換の計算の大半ができないことになるので、 A セメスター前に独学なさるべきです。

ナビゲーション

この教材は、 2018 年度東京大学教養学部統合自然科学科専門科目「実解析学演習 I」のために執筆されたものです。 TA が書いた非公式のものです。 他の回は実解析学演習 I #real-analysis-exercise-1-2018から御覧ください。

コメントする