6 月 11 日分のレポート問題の略解と講評【2018 年度 実解析学演習 I】

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まだ答案入手してないですが、解説の upload 早い方が良いでしょうからもう上げておきます。

多分皆さん大丈夫でしょうけど、採点して何かがおきたら、追記します。

準備

配点

問題番号が前回と被っているのですが、そのままにします。

問題 配点
23 60
24 20
25 20

問題 24, 25 はインターネットや教科書を調べればすぐに出てくるので、あまり高い配点にはしたくないです。配点は低いですが答えは覚えておいたほうがいいです。また、問題 23 は、仮に期末試験で出たら解けないのに単位が来るということはほとんど考えられない問題なので、この配点が妥当かと思います。

略解と講評

問題 23

略解

$y = x / \sqrt{4t}$ と変数変換する。すると \[ \frac{1}{\sqrt{4\pi t}} \int_{\mathbb{R}} f(x) e^{-x^2/4t} dx = \frac{1}{\sqrt{\pi}} \int_{\mathbb{R}} f(\sqrt{4t} y) e^{-y^2} dy \] となる。 $f$ が有界であることから $C > 0$ が存在して $\lvert f \rvert \leq C$ である。このとき $t > 0$ に対し、 $y \in \mathbb{R}$ に対し、 $\lvert f(\sqrt{4t} y) e^{-y^2} \rvert \leq C e^{-y^2}$ は( $t$ によらない)可積分関数であるから、優収束定理より、答えは $f(0)$ である。

コメント

優収束定理を正しく覚えていない、正しく適用できないなら、ルベーグ積分を勉強した意味は限りなく無に近いです。乱暴な話をすると、ルベーグ測度の構成法や、その位相的性質、積測度の構成が少々よくわからなくても、収束定理と Fubini の定理が正確に使いこなせるなら、とりあえず勉強を続けていけます。しかしその逆はありえません。1

背景としては、熱方程式の基本解の畳み込みの $0$ での値を求めていることになります。その知識がある人にとっては結論はすぐわかるでしょう。今回の問題自体には $f$ の微分可能性は必要はないです(今回の答案を作成するなら $0$ での連続性が必要ですが、実際には多分もう少し弱まるはずです。発展方程式に詳しい人に聞いてください)。

答案について

優収束定理を正しく適用できているかという問題以前に、そもそも白紙の人が予想より多かったです。変数変換を思いつかなかったのでしょうか。それなら、仕方ないかもしれませんが、しかし、この問題ができていない人がこのまま期末試験に突入すると相当まずいと思います。プレッシャーをかけるのは本意ではないですが、ルベーグ積分で一番大事な定理が優収束定理なのは間違いないので、このような言い方は大げさではありません。この問題は正確に解けるようにしましょう。

幸いなことに、上の方針をとった人で、優収束定理を正しく適用できていない人はいませんでした。

積分区間を区切って考えて正解に至った人もいましたが、全く必要ないです。遠回りする理由が全くないので、厳しいですが、正解に辿り着いている場合も 10 点減点しています。

あと全く意味のない議論を延々とやった後に正解に辿り着いた答案は、前回警告したことも踏まえて 0 点にしています。この問題でストレートに優収束定理を適用できないのは、数学の理解として重大な問題があります。

細かい計算ミスが含まれている場合は、誤診の程度によって 2 点 - 5 点を減点しています。

些細なことですが、 $e^{-x^2}$ が $\mathbb{R}$ 上可積分であることを「無断で使った」と宣言している答案がありました。皆さんにとっては基本事項ですので、無断で使ってよろしいですが、それなら宣言をなぜするのでしょう。今回の場合、さらに、その後の計算でこの正確な積分値が必要となりますので、意味がわからず、頭を抱えました。減点はありません。

問題 24

略解

$f_n = -\chi_{[n, \infty)}$ がその例です。

コメント

Fatou の補題は、手頃な問題が作りづらいです。しかし例えば考究で文献を読む時には、使用します。

問題 25

略解

$f_n = n \chi_{[0, 1/n]}$ がその例です。

採点コメント

上の 2 つの問題は、間違いを書いた人はいませんでした。例が正しいことを証明していない答案は、 1 回目の記事にも書いたとおり 0 点になっています。それ以外は満点でした。

あとは $\liminf_{k \to \infty}$ の定義は怪しい人は確認してください。悪いこと言いませんから $\sup_{N \in \mathbb{N} } \inf_{k > N} a_k$ の方がいいです。定義に極限が入っていないので、極限の存在を議論しなくて済むので、便利です。解析学で考究を始めると $\liminf$ や $\limsup$ は沢山使います。

おまけの問題の略解

問題 X1

略解

$h$ が下に有界であることより、自然数 $N$ が存在し、 $h \geq -N$ である。 $n \geq N$ に対し $n \to \infty$ で $(1 + h/n)^n \nearrow e^h$ であるから、単調収束定理より結論が得られる。増加する部分は $\log$ をとって $n$ を $x$ に変えて微分を計算すれば高校数学レベルで解決する。

問題 X2

略解

$\lvert f_n \rvert \leq (1 + \lvert h \rvert/n)^n \leq e^{\lvert h \rvert}$ であるから優収束定理を使う。後半の不等式がわからない人は $n$ 乗根をとって $e^z$ の定義を思い出す。

ナビゲーション

この教材は、 2018 年度東京大学教養学部統合自然科学科専門科目「実解析学演習 I」のために執筆されたものです。 TA が書いた非公式のものです。 他の回は実解析学演習 I #real-analysis-exercise-1-2018から御覧ください。

  1. と私も言われながらルベーグ積分の勉強をしましたし、その通りだとは思いますが、実際には、数理科学研究科には、解析学専攻なのに優収束定理が書けないという人はいます。博士課程(というより大学)は、能力より結果や人間関係、印象を重んじるので、何らかの方法でやっていくことは可能なのでしょう。 

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