5 月 28 日分のレポート問題の略解と講評【2018 年度 実解析学演習 I】

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準備

お願い

右上に BRUKER の文字が入っている紙でレポートを提出してくださった方は、できれば別の紙にして下さい。スキャナで電子データに取り込む際に、上の方の糊のせいで毎週詰まります。もちろんこれは、私の問題ですが、答案を正しくスキャンできないと思わぬ採点事故が起こるかもしれません。だからこれは「お願い」です。ご協力いただけますとありがたいです。

(06/06 追記) 今週は問題が出題されていないと聞きました。物足りない人のために末尾で手頃な問題を出しておきます。答えは 2 週間後に書きます。

配点

問題 配点
24 50
25 50

問題 23 は採点しませんでした。

100 点の人が多かったです。みなさんよくできていました。

略解と講評

問題 23

想定された問題と略解

$\mu(X) < \infty$ という仮定を追加する と問題を解くことができます。以下これを追加します。

前半は、 $0 \leq f \leq C ~~\mathrm{a.e. in}~ X$ が成立するので、 \[ 0 \leq \int_{ X } \lvert f \rvert d\mu \leq C\mu(X) < \infty \] となります。よって $f$ は可積分です。後半は $f \geq \chi_{A} ~~\mathrm{a.e. in}~ X$ より、 \[ \int_{ X } \lvert f \rvert d\mu \geq \infty \] となります。よって $f$ は可積分ではありません。

講評

先週予告した通り、教員の指示通り、採点しませんでした。回答してくださった方も多いですが、公平な採点ができないので、問題そのものを採点しないという選択をするしかないでしょう。

私は問題を一読して誤りにすぐ気づいたものの、問題を教員から頂戴するのが毎週の出題後なので、訂正が間に合いませんでした。

問題 24

略解

$f_n = f \chi_{[0, n)}$ とします。 $g_n = -f_n$ として単調収束定理を用いるだけです。

講評

単調収束定理の仮定を正しく確かめているかどうかがほぼ全てです。よくある間違いが 非負であることを落としている 答案です。数名いました。

今回は $f$ が具体的に与えられているので、積分の定義に帰着した人もいました。もちろんそれでも正解にはなりますが、単調収束定理の方が圧倒的に適用できる $f$ の範囲が多いです。

授業の定理の番号と定理の名前を両方書いた人は、前者はやめましょう。

先週も書きましたが、積分と極限を無断で交換してはいけません。確かに今回は、

\[ \lim_{n \to \infty} \int_0^n f d\mu = \int_0^\infty f d\mu \]

が成立していますが、これは任意の可測関数 $f$ に対して成立するわけではありません。

問題 25

略解

まず \[ \int_{\mathbb{R}} f_n(x) dx = - \infty \] であるから、 \[ \lim_{n \to \infty}\int_{\mathbb{R}} f_n(x) dx = - \infty \] です。一方で、 $f = 0 ~~\mathrm{a.e.}$ ですから、その積分も $0$ です。よって両者は一致しません。マイナスをつけても同様です。

前半は、単調収束定理の仮定のうち正値性を充していません。後半は、単調増加性を充していません。

講評

答案だから細かく計算する必要はあるかもしれませんが、上のことがほぼ全てです。

\[ \int_1^\infty \frac{1}{x} dx = \infty \]

の積分を、ルベーグ積分の定義から計算した答案がそこそこいました、リーマン積分との関係を用いて結構です。今回の $f_n$ は非正値関数なので、広義リーマン積分と一致します。前回出題された問題 19 に引きずられているようですが、普段は、広義リーマン積分を計算してすませて良いレベル、場合によっては自明として良いレベルの事項です。

同様に「$f = 0 ~~\mathrm{a.e.}$ ですから、その積分も $0$ です」の部分も、積分区間を分けて計算している人がそこそこいました。 $0$ を $\mathbb{R}$ 上積分して $0$ になるのは当たり前のことです。この計算を他の方法でしているのは、数学的に正しくても、ルベーグ積分の理解としては相当悪いと言えます。

もちろん正しく計算していれば、どのような方法でも、満点になります。しかしそれとは別の問題点がある答案はどうしようかと思います。

あと広義リーマン積分可能でもルベーグ可積分ではない関数もあります1。今回は $f_n \leq 0$ を断っていなくても減点はしていません。

その他

問題 25 でも触れたこととつながりますが、答案を適切な詳しさで書くのは、一義的にはいかず、問題ごとに判断する必要があります。 「とにかく何でも詳しく、定義から始めて全部書けば、数学的に絶対減点できないでしょう」 という姿勢はやめていただきたいと思います。明らかに 1 人そういう姿勢で答案を書いている方がいるのですが、仮にここを読んでくださっているなら、やめてください。目に余るので、来週からはそういう答案はどのように処遇するか考えます。

あと、必要なことが書かれていないのはそれよりも困るのですが、人数が 10 人程度なので、足りないことがあったらほぼ全ての間違いを指摘しています。

勝手に出題する問題

来週まで何もなくてつまらない人用の問題です。非公式なので、あくまでやる気のある人の学習用です。

問題 X1:$h$ を $\mathbb{R}$ 上の、下に有界な実数値可測関数とする。 $\mathbb{R}$ 上の実数値可測関数列 $\{ f_n \}_{n \in \mathbb{N}}$ と可測関数 $f$ を \[ \begin{align} f_n(x) &= \left( 1 + \frac{h(x)}{n} \right)^{n}, \\ f(x) &= e^{h(x)} \end{align} \tag{1} \] と定める。このとき、次式が成立することを証明せよ。 \[ \lim_{n \to \infty} \int_{\mathbb{R}} f_n(x) dx = \int_{\mathbb{R}} f(x) dx. \tag{2} \] ただし両辺が $\infty$ である場合にも成立に含むものとする。

問題 X2:$h$ を $\mathbb{R}$ 上の複素数値可測関数とし、次式を充たすものとする。 \[ \int_{\mathbb{R}} e^{\lvert h(x) \rvert} dx < \infty. \] $\mathbb{R}$ 上の複素数値可測関数列 $\{ f_n \}_{n \in \mathbb{N}}$ と可測関数 $f$ を (1) の通りに定める。このとき、 (2) が成立することを証明せよ。

もしかしたら問題 X2 はまだ習っていない定理を使うかもしれません。その場合、次回の講義以降考えてみて下さい。

ナビゲーション

この教材は、 2018 年度東京大学教養学部統合自然科学科専門科目「実解析学演習 I」のために執筆されたものです。 TA が書いた非公式のものです。 他の回は実解析学演習 I #real-analysis-exercise-1-2018から御覧ください。

  1. 例えば $f(x) = \sin x / x$ ($x \in \mathbb{R} \setminus \{ 0 \}$), $f(0) = 1$. 

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