5 月 21 日分のレポート問題の略解と講評【2018 年度 実解析学演習 I】

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準備

告知

問題 23 は致命的な出題ミスを含んでいます。教員の指示を受けて 問題 23 は採点しません 。おそらく想定されたであろう問題とその解答は、来週告知します。

配点

問題 配点
20 30
21 40
22 30 (+10)

合計 110 点満点ですが、 100 点頭打ちとします。問題 22 は 30 点満点が基本で、難しいところができていればさらに 10 点加点します。

略解と講評

問題 20

略解

$[1, \infty)$ 上の関数 $f$ を $f(x) = 1/x$ とします。ルベーグ積分の定義に従うならば、積分値が $\sum_{i = 2}^\infty 1/i = \infty$ 以上である従います。この前の記事でこの級数が発散することはこの積分から導かれますよと申し上げましたが、別に他の方法でも可能なので1、気にせず使いましょう。他には有界区間で $f$ はリーマン積分可能でその値もすぐ求まりますので、 $f_n = f \chi_{[1, n)}$ に単調収束定理を使うなどでも可能です。知識が増えれば色々別解がかけますが、どれでもいいです。

講評

$f$ が広義リーマン積分で $\infty$ に発散することに帰着させる場合は $f \geq 0$ を指摘する必要があります。ルベーグ積分の定義は細かい variants も含めると 3 通りくらいあるのですが、どれでもできます。皆さんが講義された流儀も容易に想定できますし、細かい記述ミスも大事ではないので、大抵満点になっています。

問題 21

略解

\[ \int_\mathbb{R} fd\mu = \int_{ \{ 0 \}} fd\mu + \int_{ \mathbb{R} \setminus \{ 0 \}} fd\mu \]

と分けて、前者は $f(0)$ 、 後者は $0$ になることが積分の定義と $\mu$ の定義から従います。よって答えは $f(0)$ です。 $f$ を適当な可測単関数で挟むなど、別解はありますが、だいたい同じ議論を遠回りするだけです。

講評

思ったよりずっと正解率が低かったです。全領域で積分の定義に従った人、単調収束定理に帰着しようとしている人もいました。できている人もできていない人もいましたが、上の解法の方が良いでしょう。

また、積分と極限を取り替える操作は全く自明でないです。だからこそ色々な定理があります。 $f$ を適当な列で近似して 勝手に 極限を取り替えた答案は全く間違いと判定されます。この後たくさん出題されるので先に申し上げておきます: 極限と積分は勝手に取り替えてはいけません。定理を使うときは明示的に仮定をチェックするべきです。なぜなら仮定を充さない場合に反例があるからです。

$f$ は連続関数とは限りません。これも知らず知らずのうちに使っている答案がありました。

問題 22

ヒントに書かれている集合の $2^n$ を $2^{n+1}$ に取り替えて $(0, 1)$ との共通部分を取った集合を $U_\epsilon$ とします。

略解

補題 1 : $\epsilon > 0$ とする。このとき $[0, 1]$ の稠密な開集合 $U$ であり $\mu(U) \leq \epsilon$ を充たすものが存在する。

$U_\epsilon$ がそれです。

補題 2 : $\epsilon > 0$ とする。このとき、任意の $s \in (\epsilon, 1]$ に対し、 $[0, 1]$ の稠密な開集合 $U$ であり $\mu(U) = s$ を充たすものが存在する。

$0 \leq r \leq 1$ とする。 $V_r = (0, r) \cup U_\epsilon$ とすると、 $\mu(V_r)$ は $(\epsilon, 1]$ の全ての値をとる。よって補題 2 が従う。

この部分を正確にやると、 $f(r) = \mu(V_r)$ が連続関数であることを証明することになりますが、ここは右極限と左極限に分けて減少列連続性と増大列連続性を使うとできます。

補題 2 と、$[0, 1]$ の開集合 $U$ は $0 < \mu(U) \leq 1$ を充たすことより、答えは $(0, 1]$ の任意の値です。

部分点

補題 1 の事実を指摘できていれば 20 点与えます。ここが不当に高得点であるという人もいるかもしれませんが、救済措置とご了解ください。ただし、ヒントを書き写しているだけとしか認められない答案は、白紙と価値が変わらないので、残念ながら 0 点です。残りの部分に 10 点です。ただし、 $\mu(V_r)$ は $(\epsilon, 1]$ の全ての値をとることを正確に証明した答案はさらに 10 点を与えます。 40 点取った人はほとんどいません。

講評

補題 1 の部分を、 $\mu(U_\epsilon) = \epsilon$ とし、その後 $\epsilon$ を動かして結論を得た人が多かったですが、これは間違いです。完全加法性を用いるならば disjoint を確かめる必要がありますが、今回は成り立っていません。この間違いをした人にも部分点をつけることも考慮しましたが、基本事項、最初の方から間違えている、この場合補題 2 には到達し得ないことを考えると、非常に悲しいですが、部分点はなしとしました。

$\mu(V_r)$ は $(\epsilon, 1]$ の全ての値をとることの証明に挑戦した人は複数いて、正しい人も間違っている人もいましたが、上の解法を取った人はいませんでした。 測度を部品として含んだ関数を考慮するときは、定理に頼る ことをお勧めします。測度は非常に煩雑な定義を有し、さらに、性質が限られているので、定理に頼るのが安全です。

ナビゲーション

この教材は、 2018 年度東京大学教養学部統合自然科学科専門科目「実解析学演習 I」のために執筆されたものです。 TA が書いた非公式のものです。 他の回は実解析学演習 I #real-analysis-exercise-1-2018から御覧ください。

  1. 例えば $1 + 1/2 + 1/3 + 1/4 + 1/5 + \dots > 1 + 1/2 + 1/4 + 1/4 + 1/8 + \dots > 1 + 1/2 + 1/2 + \dots$ の変形から従う。項が全部正なのでこれは正当化される。 

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