4 月 23 日分のレポート問題の略解と講評【2018 年度 実解析学演習 I】

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準備

ゼノンのパラドックス

まず今回の問題はどれも、次の事実を理解していることが重要です。講義でも何回もやっていると思いますが、テクニックとして明示します: $\epsilon > 0$ とします。この時、この $\epsilon$ は以下のように 可算無限個の和 に分割できます。

\[ \epsilon = \frac{\epsilon}{2} + \frac{\epsilon}{4} + \frac{\epsilon}{8} + \dots = \sum_{i = 1}^\infty \frac{\epsilon}{2^i} \]

これにより、可算無限個の集合からなる和集合 $A$ を、それぞれの集合の外測度 $\epsilon/2^i$ 以下で評価することにより、 $\mu^*(A) = 0$ であることを示すことができます。上記の $\epsilon$ の分割は解析学では非常に汎用性の高いテクニックなので、よく使えるようになっておくとよろしいでしょう。

配点

得点が高く出るように、簡単な問題ほど高い配点にしました。

問題 配点
11 40
12 35
13 25

略解と講評

問題 11

上のテクニックをそのまま使うだけです。

この問題ができないとその先はまず無理です。できなかった人は問題 12 以下はひとまず放置で良いので、よく考えてみてください。

コメント

$1$ 次元ルベーグ外測度と $2$ 次元ルベーグ外測度を混同している人が複数人いました。この問題で $1$ 次元ルベーグ測度で $\mathbb{R}^2$ の部分集合を測ることはそもそもできません。また、前者で $\mathbb{R}$ を測ると $\infty$ ですが、 $\mathbb{R}^2$ の部分集合としての $x$ 軸を後者で測ると $0$ になります。したがってこれは重大な誤りです。この機会に意識しておいてください。

上記の解法によらず、外測度 $0$ の集合の可算無限個の和集合だから外測度 $0$ と述べた答案は正解になっています。

問題 12

答案に書かれていた全ての方針について、略解を示します。皆さんがルベーグ外測度をどこまで講義されたか推測ができないのですが、ルベーグ外測度が予めわかっている集合は、半開区間の直積でなくても別に構わない(問題より明らかに難しいものは使ってはならないでしょうが)という立場をとりました。採点もそのようにしています。

回転普遍性を使う方法

まず $x$ 軸の外測度が $0$ であることを示します。例えば横幅 $1$、縦幅 $\epsilon/2^i$ の長方形で原点から両方向へ覆うと、 $x$ 軸の外測度は $2\epsilon$ で抑えられます。これらを原点を中心に $\pi/4$ だけ回転させれば、問題の対角集合 $S = \{ (x, x) \in \mathbb{R}^2 \mid x \in \mathbb{R} \}$ を覆えます。ここから従います。

極座標表示した人もいましたが、この場合ルベーグ外測度を計算する際に、直交座標と異なった計算方法になる事に注意してください。簡単ではないのでおすすめはしません。

有界な区間に分割してから覆う方法

まず $n \in \mathbb{Z}$ に対し $E_n = \{ (x, x) \in \mathbb{R}^2 \mid n < x \leq n+1 \}$ とする。 $n \in \mathbb{N}_{> 0}$ とする。 $I_k = (k/n, (k+1)/n] \times (k/n, (k+1)/n]$ とする。 $E_0 \subset \bigcup_{k = 0}^{n-1} I_k$ であることから、計算すると $\mu^*(E_0) = 0$ が従う。同様に $\mu^*(E_n) = 0$ が従う。 $S = \bigcup_{n \in \mathbb{Z}} E_n$ より結論が従う。

この解法では $S = \bigcup_{n \in \mathbb{Z}} E_n$ と可算無限個に分けてそれぞれの集合で仕事をすることが重要です。下の解法と混同している人がいました。

いきなり全部覆う方法

$\epsilon > 0$ とする。 $n = 1, 2, \dots$ と順番に原点から 1 辺 $\epsilon/n$ の、辺が軸に平行な正方形で順番に両方向に $S$ を覆う。 すると $\sum_{n = 1}^\infty 1/n = \infty$ であるから $S$ を覆い尽くせるがその和集合のルベーグ測度は $A\epsilon^2$ の形になる($A > 0$ はある定数)。よって $\mu^*(S) = 0$ である。

この解法は $\sum_{i = 1}^\infty 1/i = \infty$ であり、かつ $\sum_{i = 1}^\infty 1/i^2 = \pi^2/6 < \infty$ であることに立脚しています。これを意識できている人はこの解法で正解しています。逆に、 $S$ を覆い尽くせていない人や、覆い尽くせているが和集合のルベーグ外測度が実は $\infty$ になっている人もいました。

知識として、

\[ I_k = \int_1^\infty \frac{1}{x^k} dx \]

は $k > 1$ の時は $I_k < \infty$ であり、 $0 < k \leq 1$ の時は $\infty$ です。このことは覚えておくと役に立ちます。

その他

背理法を正しく使えていた人は正解していました。 $S$ は可算無限個の点集合ではないので問題 11 と同様と述べた答案は得点が全くありません。

問題 13

可算無限の命題に置き換える

皆さんもご存知の通り、解析学では非可算無限個は扱いづらいです。例えば、ルベーグ可測集合の非可算無限個の和集合や共通部分はルベーク可測集合ではない場合があります。ですから 非可算無限の絡む命題を、可算無限の同値な命題で置き換える という指導原理が非常に有効です。

簡単な例をメモします。 $A = 0$ を示すために、「任意の $\epsilon > 0$ に対し $\lvert A \rvert < \epsilon$ であること」を示すことはよくあることです。これと「任意の $n = 1, 2, \dots$ に対し $\lvert A \rvert < 1/n$ であること」は同値な命題です。前者の方が正道ですが、同値な命題である後者を使う方が有効であることも多々あります。前者はいわば非可算無限個の $\epsilon > 0$ に対する命題です。しかし後者は $n$ が整数であることや、確かめる $n$ が可算無限個であることにより、メリットがあります。後ろの議論が見通し良くなったり、そうすることで初めて突破できる場合もあります。

この問題では、このテクニックを使わずとも解けますが、使うと見通しが良くなります。

略解

$\epsilon > 0$ とする。 $f$ は $[0, 1]$ 上一様連続であるから、正の自然数 $n$ が存在し、 $x, y \in [0, 1]$ に対し $\lvert x - y \rvert < 1/n$ ならば $\lvert f(x) - f(y) \rvert < \epsilon$ となる。 $[0, 1]$ を長さ $1/n$ の区間に $n$ 等分にし、左から順に $I_0, \dots, I_{n-1}$ とする。つまり $i = 0, \dots, n-1$ に対し $I_i = [i/n, (i+1)/n]$ とする。このとき、集合 \[ S_i = \{ (x, f(x)) \in \mathbb{R}^2 \mid x \in I_i \} \] について、長さ $\epsilon$ の閉区間 $J_i$ が存在し $S_i \subset I_i \times J_i$ が成立する。よって $S \subset \bigcup_{i = 0}^{n - 1} (I_i \times J_i)$ が成立し、次式が成立する。 \[ \mu^*(S) \leq \sum_{i = 0}^{n - 1} \mu^*(I_i \times J_i) = n \cdot \frac{\epsilon}{n} = \epsilon. \] $\epsilon > 0$ は任意であるから、 $\mu^*(S) = 0$ である。

講評

できている人はだいたい問題ありませんでした。しかし「区間を細かく分割していくと、覆う長方形の面積は小さくなるし、その面積の和も小さくなる」というのはすぐ想像できるでしょうから、あとは上のテクニックを意識しておけば解答にはいたると思います。

「長さ $\epsilon$ の閉区間 $J_i$ が存在し $S_i \subset I_i \times J_i$ が成立する」で怪しいことをしている人はいました。例えば $x_i \in I_i$ を固定した場合は $y \in I_i$ に対して $\lvert f(x_i) - f(y) \rvert < \epsilon$ となるのは事実です。したがってこの場合 $S_i \subset I_i \times (f(x_i) - \epsilon, f(x_i) + \epsilon))$ となります。こうするならば、縦は $2\epsilon$ で抑える事に注意してください。一様連続の $\epsilon$ を $\epsilon/2$ にしている人はもちろん縦は $\epsilon$ で良いです。この手のミスで正しく覆えていない人は、軽微なミスとして減点しています。

ナビゲーション

この教材は、 2018 年度東京大学教養学部統合自然科学科専門科目「実解析学演習 I」のために執筆されたものです。 TA が書いた非公式のものです。 他の回は実解析学演習 I #real-analysis-exercise-1-2018から御覧ください。

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