4 月 16 日分のレポート問題の略解と講評【2018 年度 実解析学演習 I】

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受講生へのフィードバックについて

受講生の皆さんの答案に可能な限りフィードバックしたいのは山々ですが、この科目は TA が私 1 人しかついていないので、全てを丁寧に行うと物量的に限界があります。そこで担当教員と相談し、業務内容を整理しました。

レポートの採点

まず レポート問題は毎週 4 題以下 にしてもらうことにしました。次に皆さんへの受講生のフィードバックについて工夫することにしました。受講生の皆さんの答案は全て控えを取り、採点をしています。ただしその結果を朱筆で一字一句指摘するのはやめ、 評定のみをつけて返却 します。つまり、素点に応じて A-D の 4 段階で評定がつきます。しかし受講生の皆さんが間違えたり誤解していそうな部分については、毎週この 講評記事で指摘 をします。受講生の皆さんが間違うところや怪しいところなどは大抵の場合共通していますので、有意義に活用して下さい。

解答について

まず、当たり前のことですが、私は採点に先立ち、レポート問題は全部解いています。ほとんど全ての問題の解答を知ってはいますが、それとは関係なく、全問解答を作成しています(自分に読める程度の文字ですが)。その上で受講生の皆さんの答案を採点しています。

その上でこの記事で略解を掲載するかどうかについてです。解答を全部打ち込むのは大変なので、基本的には略解を書きます。ただし、定義に基づいて容易に確かめられる場合、自分でやらないと意味がなくなる場合などは、略解を省略します。担当教員もおっしゃっておりましたが、そういう問題は一度は考えるべき重要な例です。一方で全員が破滅している場合などは詳しく略解を書くことにします。

点数と評定について

担当教員には素点と評定を報告しています。どうやって最終成績がつくかは教員にお問い合わせください。しかし確実に、皆さんの毎回の素点が良いことは、皆さんにとっては得ではあっても損ではないのでしょう。そこで TA としては、先週書いた原則のもとで、素点が高くなるように採点基準を作り、高い部分点を与えるように努力します。一方で、同じ評定がついている答案でも出来不出来によって素点が異なりますので、高い点数を取るようにレポート作成することは報われます。

配点

今回は、全部 20 点です。

謝辞

担当教員の宮本先生、業務の効率化にご協力いただきましてありがとうございます。受講生の皆さんも、前回申し上げたレポートの書き方を踏襲してくださりありがとうございます。

略解と講評

問題 6

ほぼ全員できていました。

できていない方は、コンパクト性の定義を確認してください。最初に任意の、しかも、 非可算無限個も許した 開被覆を取る必要があります。

あと問題文の指示とは異なり、コンパクトの定義から直接示していない人が数名いましたが、遠回りになっていました。そういう人は定義から直接示すことができないのではないかと心配です。できるかどうかは答案からはわからないので自分でチェックしてください。

問題 7

略解

$A = \{ (x, y) \in \mathbb{R}^2 \mid x^2 + y^2 < 1 \}$とする。例えば $n = 2, 3, \dots$ に対し \[ V_n = \{ (x, y) \in \mathbb{R}^2 \mid x^2 + y^2 < 1 - 1/n \} \] とすると、 $\{ V_n \}_{n = 2}^\infty$ は $A$ の開被覆であるが、有限個からなる部分被覆を取ることはできない。どのように有限枚を取っても、有限性が効いて被覆になっていないことが示される。気を使って $n \geq 2$ としたが、 $n = 1$ を含めても良い。

講評

上記の例をあげた人がほぼ全員でした。任意の $N = 2, 3, \dots$ に対し $\bigcup_{n = 2}^N V_n \not\supset A$ を示しただけの人が結構いました。「任意の $N$」すら省略している人もいました。これは厳密にいうと足りないです。任意の有限個の部分開被覆は、 $n = 2, 3, \dots, N$ と連続で選んでくる必要はなく、途中が抜けていてもいいからです。非常に簡単なことですが、何も断らずにこれだけ示している人は理解が怪しいと感じてしまいます。任意の有限個の部分開被覆 $\{ V_{n_i} \}_{i = 0}^M$ を選んでから $n_i$ たちの最大値をとるのが正着です。またはこの議論につなげるなら $\bigcup_{i = 0}^M V_{n_i} \subset \bigcup_{n = 2}^N V_n$ となる $N \geq 2$ が存在すると述べるかです。どちらかが指摘できていれば満点になっています。

$\epsilon > 0$ に対し、 \[ V_\epsilon = \{ (x, y) \in \mathbb{R}^2 \mid x^2 + y^2 < 1 - \epsilon \} \] とし開被覆 $\{ V_\epsilon \}_{\epsilon > 0}$ について議論しても同様です。いくらでもコンパクト性を否定する例はありますが、 必ず有限性が効いている はずで(例えば最大値をとれることに効いてくる)、そこがはっきりしていない答案は、そもそも誤りか、適切な答案ではありません。

あと、背理法は使う必要はありません。使った人は使わない答案に直してみると良いでしょう。

問題 8

全部で以下の $5$ つです。

{{},{1},{2},{1,2},{3},{1,3},{2,3},{1,2,3}}
{{},{1},{2,3},{1,2,3}}
{{},{2},{1,3},{1,2,3}}
{{},{1,2},{3},{1,2,3}}
{{},{1,2,3}}

問題 9

答えは $15$ 個です。どんな方法でも結構ですが、密着位相 $\{ \emptyset, X \}$ と power set $\mathcal{P}(X)$ 以外は大きく 2 パターンになることを見抜いて数えることになるでしょう。

全部書き出すと以下の通りです。できなかった場合も答えを確認していただければそれで十分かと思います。自力で解くことがそこまで重要な問題ではないです。最終結果を間違えた人も、正しい議論には部分点がついています。

{{},{1},{2},{1,2},{3},{1,3},{2,3},{1,2,3},{4},{1,4},{2,4},{1,2,4},{3,4},{1,3,4},{2,3,4},{1,2,3,4}}
{{},{1},{2},{1,2},{3,4},{1,3,4},{2,3,4},{1,2,3,4}}
{{},{1},{3},{1,3},{2,4},{1,2,4},{2,3,4},{1,2,3,4}}
{{},{1},{2,3},{1,2,3},{4},{1,4},{2,3,4},{1,2,3,4}}
{{},{1},{2,3,4},{1,2,3,4}}
{{},{2},{3},{2,3},{1,4},{1,2,4},{1,3,4},{1,2,3,4}}
{{},{2},{1,3},{1,2,3},{4},{2,4},{1,3,4},{1,2,3,4}}
{{},{2},{1,3,4},{1,2,3,4}}
{{},{1,2},{3},{1,2,3},{4},{1,2,4},{3,4},{1,2,3,4}}
{{},{1,2},{3,4},{1,2,3,4}}
{{},{3},{1,2,4},{1,2,3,4}}
{{},{1,3},{2,4},{1,2,3,4}}
{{},{2,3},{1,4},{1,2,3,4}}
{{},{1,2,3},{4},{1,2,3,4}}
{{},{1,2,3,4}}

問題 10

略解

(4/24 20:48 訂正)

$A \in \mathcal{F}$ に対し $m(A) \in [0, \infty]$ であることと $m(\emptyset) = 0$ であることを指摘し(後者は定義に含めない流儀もあるのでなくても良い)、そのあと講義の定理 2.5 を使用する。

講評

多くの人は講義の定理 2.5 (と思われるもの)を使用していました。引用していればもちろん構いません。すなわち、定理 2.5 を($1$ 次元の場合で良いので)述べた上で、仮定をチェック、特に、 \[ F(x) = \int_0^{x} \frac{1}{\sqrt{4\pi}} e^{-t^2} dt \] が単調増加で右連続であることを指摘してある答案は満点になっています。定理 2.5 の内容がわからず単独では意味がわからない答案が複数ありました。講義がどんな風だったかはわかりませんが、少なくとも $m$ の有限加法性すら指摘していない答案は不備と言えます。定理 2.5 を引用してくださった他の方のおかげで、そういう答案も意味を補うことができ、採点でき、ある程度点数がついています。

完全加法性の部分で $\mathcal{F}$ は半開区間の有限個の直和であることを断ってから、任意の disjoint な半開区間の列 $\{ I_i \}_{i = 0}^\infty$ に対し、 \[ m \left( \bigcup_{i = 0}^\infty I_i \right) = \sum_{i = 0}^\infty m(I_i) \] であることを直接示そうとした時に、無限和の議論は難しいです。私も最初難しくないと思っていましたが、非自明です。定理を適用しないなら、 $F$ の右連続性を利用し、半開区間の内側の閉区間を適当にとってコンパクト性を経由することがどうしても必要なようです。結局定理を適用した方が早いです。

定理 2.5 は、人によって流儀が異なります。スティルチェス測度を存在を示す際に、これに当たることをやりますが、私は定理 2.5 と違う形でこれに当たることを経験していました。講義とは全く違う流儀でルベーグ測度を定義するとこれは経由しません。

25 日追記

採点を終えたあと、スティルチェス測度の構成法を、おそらく講義とは異なる方法で復習しました。そこで確信を持ったのは、スティルチェス測度の元となる関数の右連続性は、測度を「拡張」する際に使用されるということでした。現代的には、目標となる測度を構成する際に、最初に易しい可測空間上の測度を定義し、可測空間を拡張して目標となる測度を得るのが効率が良い方法とされています(特に確率論では)。それでいうと右連続性は測度の拡張に使用されていました。

今回の問題に即していうと、 $m$ が有限加法的測度であることは、 $F$ の右連続性とは全く独立に示されることです。繰り返しますが、私は講義の定理 2.5 で何を示されたのかは(親切な受講生の方が書いてくれた内容を信じる以外の方法では)わかりません。しかし確実に言えるのは、その定理は有限加法的測度が完全加法的測度であることの条件を述べたものであって、ある関数がいきなり完全加法的測度であることを従えるようなものではないということです。ですから「少なくとも $m$ の有限加法性すら指摘していない答案は不備と言えます」という部分は妥当な指摘であろうと改めて思います。

しかし、このような基本的内容すらも記憶しておらず、頭の中から出て行ってしまうような時間を過ごした私はこれまでの研究生活でそれと引き換えに何を得たのかと考えると、不甲斐なく、虚しくなりました。

個人情報について

採点に当たって個人情報を取得することになるので、法令に基づき、規約を示します。

  1. 私が保管する受講生の個人情報は、受講生の氏名、学生番号と、毎週のレポートの控え(採点結果も含む)のみです。以下これらを単に「個人情報」と表記します。これら以外は、別途本人の許可を得ない限り、取得しません。
  2. 個人情報は担当教員とは共有します。第三者とは共有いたしません。ただし以下の例外があります。
    • 受講生本人の同意がある場合
    • 大学教務または大学本部から受講生本人の成績を確認する目的で開示を求められた場合
    • 国の機関、地方公共団体またはその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある場合
    • 業務の承継に伴って個人情報を提供する場合
    • その他法令等に基づき第三者に対する開示または提供が許される場合
  3. 私が保管する個人情報は適切なセキュリティのもとで管理され、個別に許可を得ない限り 2019 年 3 月末日までには破棄されます。
  4. 教務システムで受講生登録をした時点またはレポートを提出した時点で、以上のことには同意を得たものとします。

ナビゲーション

この教材は、 2018 年度東京大学教養学部統合自然科学科専門科目「実解析学演習 I」のために執筆されたものです。 TA が書いた非公式のものです。 他の回は実解析学演習 I #real-analysis-exercise-1-2018から御覧ください。

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