4 月 9 日分のレポート問題の略解と講評【2018 年度 実解析学演習 I】

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レポート提出なさる方へのお願い

管理の関係上 「A4 の普通の用紙」に「片面」で記入していただけると大変ありがたいです。ルーズリーフのような普通でない用紙は避けてもらえると安全です。複数枚ある場合でも、ホチキスなどで止めていただければ読みます。 TA としては TeX 出力が読みやすくてありがたいですが、手書きでも読みます。

略解と講評

全部解答を書いていると時間が勿体無いので略解を書きます。略解を書くのも大変なので、 TA としては、レポート問題を減らして欲しいと思う。 5 問もあるとは思っていなかった。量が多すぎるのが続いたり、別にこんな記事いらないよと言われたりしたら、今後は採点するだけにとどめたいと思います。私としては、丁寧に採点したいです。

以下書くのは略解ですから、レポートとして論証が必要な部分は補って書かないと得点になりません。

問題 1

略解

適当な本には必ず載っているので省略する。 \[ \left\lvert \int_0^1 f_n(x) dx - \int_0^1 f(x) dx \right\rvert \] を三角不等式を用いて上から評価することで示される。または一様収束ノルム \[ \left\| f_n - f \right\|_{C[0, 1]} = \sup_{x \in [0, 1]} \lvert f_n(x) - f(x) \rvert \] を使用してもよろしい。一様収束ノルムは通常は連続関数の空間に使用されるが、実際は連続性を仮定せずに使用できる。

講評

(2) は数列の極限の問題なので、定義に従って示すなら、「$N$ が存在し」の $N$ をどうやって取るのか、または、存在をどうやって示すのかが論証のすべてである。 $N$ の存在を答案中はっきりと述べられていないものは罪深さに応じて減点した。

あとそれと、問題文がよくなくて、 $f_n$ (と $f$) はリーマン可積分であることは仮定するべきである。または連続関数にするかである。この部分で困っていると推測できる答案も 2 通あった。

そもそも $f_n$ 自体がリーマン可積分であることが仮定されていないので、はっきり言うと問題は不成立である。例えば $E \subset [0, 1]$ をルベーグ可測でない集合とする(選択公理を仮定すると必ずある。$[0, 1]$ のルベーグ測度は $0$ ではないから)と単関数の列 $f_n = \chi_{E}$ は $f = \chi_E$ に $[0, 1]$ 上一様収束するが、積分は定義できないのだから極限も何もない。

どうしようかなぁと思ったのだが、この部分を明確に指摘できている答案はなかったので、採点上はこの部分は問題にしないことにした。

問題 2

略解

例えば、 \[ f_n(x) = \begin{cases} x/n^2 & (0 \leq x \leq n), \\ -(x-2n)/n^2 & (n \leq x \leq 2n), \\ 0 & (\text{otherwise}) \end{cases} \] とすると、これは連続で、(i) は直ちに成立し、 (ii), (iii) も \[ \int_{-\infty}^{\infty} f_n(x) dx = 1 \] であることより従う。他にも例はたくさんあるだろう。

講評

できていない人はほとんどいなかった。連続関数でないものを書いた人もいた。複雑な関数列を挙げた人も多かったようだが、共同でレポート問題を解いているグループがあるのでしょうか? 私は別に構いません。だけれども、みんなで同じミスをしないようには気をつけてください。私が理学部数学科 3 年生のころは位相幾何学のレポート問題を一部のグループは共同で解いていた。そこで、ある回に、みんなで誤答に陥っていました。同じものに同じく間違いだとレポートにコメント書くのが辛かったと当時の TA は言っていました。私も同じことはしたくないですので、どうぞお気をつけください。数学における共同作業は否定しませんが、意外と自分 1 人で考えたり調べたりした方が正解に至ることも多いと思います。

問題 3

略解

以下では $x \in \mathbb{R}^n$, $r > 0$ に対し \[ B_r(x) = \{ y \in \mathbb{R}^n \mid \lvert x - y \rvert < r \} \] と表記する。

$x \in \mathbb{R}^n \setminus A$ とする。 $x \neq 0$ より、 $r = \lvert x \rvert$ とすると、 $r > 0$ であり、 $B_r(x) \subset \mathbb{R}^n \setminus A$ である。よって $A$ は $\mathbb{R}^n$ の閉集合である。

講評

これはほとんどの人ができていた。位相空間 $X$ において $x$ の近傍とは $x$ を含む開集合のことである。「近傍でない点」というのは何の意味もなしていない。

皆さんどのくらい位相空間論をカリキュラム上勉強するのかわかりませんが、位相空間において閉集合の定義は、補集合が開集合であることです。距離空間や $\mathbb{R}^n$ だともう少し違った定義もできますが、位相空間においてはこれ以外定義しようがありません。だから「定義通り」にやるべきです。

問題 4

講義で $\bigcup$ は $\bigcap$ の誤りだと訂正したと教員から聞いたのでその通りに採点することにする。

略解

例えば $I_n = (-1/n, 1/n)$ とすると、 $I_n$ は $\mathbb{R}$ の開集合であるが、 $S = \bigcap_{i = 0}^\infty I_n = \{ 0 \}$ である。これは開集合ではない。どのような $r > 0$ に対しても $B_r(0) \not\subset S$ であるからである。

講評

問題 3 は $\{ 0 \}$ が閉集合だと言っているだけなので、開集合ではないことを示しているわけではないことに注意されたい。例えば $\emptyset$ と $\mathbb{R}$ は $\mathbb{R}$ の開集合でもあり閉集合でもある。一応 $\mathbb{R}$ は連結なので、開集合でも閉集合でもあるものはこの 2 つに限られる。もちろん開集合でも閉集合でもない集合は山ほどある。単に「開集合ではない」と書いた答案も、この答案と客観的に区別がつかないので、残念ながら採点上は、等しく 0 点にしてある。

問題 5

ほとんどの人ができていなかったので、詳しく解説を書く。途中で閉包の定義が出てくるが、講義で扱った定義とは異なるかもしれない。

略解

以下では $x \in \mathbb{R}$, $r > 0$ に対し、 \[ B_r(x) = \{ y \in \mathbb{R} \mid \lvert x - y \rvert < r \} \] と表記する。$\mathbb{R}$ の開集合、 $\mathbb{R}$ の閉集合を、それぞれ単に開集合、閉集合と書くことにする。

補題 1 : $S$ は閉集合ではない。

証明: $0 \in \mathbb{R}$ について、どのような $r > 0$ に対しても $B_r(0) \cap S \neq \emptyset$ が成立する。よって $\mathbb{R} \setminus S$ は開集合ではない。よって $S$ は閉集合ではない。

補題 2 : $T = S \cup \{ 0 \}$ とする。このとき $T$ は閉集合である。

証明: $x \in \mathbb{R} \setminus T$ とする。 $x < 0$ のとき、 $r = \lvert x \rvert$ とすると、 $r > 0$ であり $B_r(x) \subset \mathbb{R} \setminus T$ となる。 $x > 1$ の時も $r = \lvert x - 1 \rvert$ とすると同様である。 また $0 < x < 1$ のとき、 $S$ の定義により正の自然数 $n$ が存在し、 \[ \frac{1}{n+1} < x < \frac{1}{n} \] が成立する。よって \[ r = \min \left\{ \left\lvert \frac{1}{n+1} - x \right\rvert, \left\lvert \frac{1}{n} - x \right\rvert \right\} \] と定めると、 $B_r(x) \subset \mathbb{R} \setminus T$ となる。よって $\mathbb{R} \setminus T$ は開集合である。よって $T$ は閉集合である。

命題 3 : $\overline{S} = T$ である。

証明: $S$ の閉包は、 $S$ を部分集合として含む最小の閉集合である。補題 1 より $S$ 自身は閉集合ではない。したがって $\overline{S} \setminus S \neq \emptyset$ であるが、補題 2 より、 $S$ に 1 点を付け加えた $T$ は閉集合である。したがって、閉包の一意性より $T$ が $S$ の閉包である。

補題 4 : $0$ は $S$ の集積点である。

定義通りやれば示される。省略。

補題 5 : $x \neq 0$ とする。このとき $x$ は $S$ の集積点ではない。

証明: $x \not\in S$ のとき、 $\overline{S \setminus \{ x \}} = \overline{S} = T \not\ni x$ である。 $x \in S$ のときは、補題 1, 2 と全く同様にして $\overline{S \setminus \{ x \}} = (S \setminus \{ x \}) \cup \{ 0 \}$ が示される。よって $x \not\in \overline{ S \setminus \{ x \}}$ である。

命題 6 : $S$ の集積点の集合は $\{ 0 \}$ である。

証明: 補題 4, 5 よりただちに従う。

講評

皆さんの答案を見ると、講義では $A \subset \mathbb{R}^n$ に対し、

  • $A$ の閉包は、 $A$ の内部と境界の和集合。
  • $A$ の内部は、 $A$ の内点の集合。
  • $A$ の境界は、 $A$ の境界点の集合。
  • $x \in \mathbb{R}^n$ が $A$ の内点であるとは、 $r > 0$ が存在し、 $B_r(x) \subset A$ が成立することをいう。
  • $x \in \mathbb{R}^n$ が $A$ の外点であるとは、 $x$ が $\mathbb{R}^n \setminus A$ の内点であることをいう。
  • $x \in \mathbb{R}^n$ が $A$ の境界点であるとは、 $x$ が $A$ の内点でも外点でもないことをいう。

としたのだろうかと推測する。この下で論証している答案は正しく採点している。

背理法を無意味に使っている答案が非常に多かった。背理法で仮定した内容を議論中に使わないのであれば背理法にする意味は全くありません。これは不適切な受験指導の弊害の 1 つなので意識的に矯正してください。

一般的な注意

論理記号について

論理記号の使用は慎重になさってください。論理記号で述べたい内容が書かれていても、それが何の役割でそこで述べられているのか解釈に苦労する場合があります。「その命題を示そうとしている」のか「その命題を用いて別のものを示そうとしている」のか「その命題を適用できることを主張している」のか、本人がわかっていても、 TA にはわからないことが結構あります。例えば集合の記法で $\mid$ の後ろには論理記号を使っても良いと思います。しかし、 地の文では論理記号を全く使用せず日本語で書くべき だと思います。

採点の原則

答えだけ述べた答案は、 0 点と採点するしかありません。例を挙げよという問題も類比的です。その答えが仮に正しいものであったとしても、全く関係なく 0 点とします。その答えが正しいことの論証をレポートとして求めているのであり、その部分に全く言及がないならば答案としては白紙と同じだからです。これに限らず 採点者が内容を補完して初めて完成するような答案は避けるべき です。

仮に正解にたどり着けなくても、論証内容の確度と有効度に応じて部分点をつけることができます。しかし、結果的に正しい内容が述べられているだけでなく、 その議論が問題を解くのに有効である場合に部分点 を与えることができます。内容が正しくとも、問題を解くのに有効でない議論には部分点はつきません。

一方で、数学は行儀の良さを見る科目とは違うので、細かい書き間違えや本質的でないミスは、わずかに減点するか、または減点しません。でも私の手間が増えるので、提出前に細かい表記ミス等をしていないか見直しはしていただきたいです。

定理や記号について

TA は、この講義で扱う内容は知識としては持っていますが、講義を受けていません。したがって「講義の定理を用いると…」と書かれても何のことはわかりません。だいたい予想はつきますが、この分野は流儀の違いが結構あるので、定理の主張を正確に特定することは困難です。ですから、 定理を使う場合は、主張がはっきりわかるようにしてください 。必要なら引用してください。または有名な定理であれば、定理の名前があるので、それを述べても構いません。

また記号についても、講義の中だけで使用される記号も多いです。例えば $A$ の閉包は $\overline{A}$ 、 $A$ の境界は $\partial A$ 、 $A$ の内部は $A^\circ$ と書くのは非常に広く使用されていますが、 $A^e$ などはそんなに主流ではないと思います。予想することはできますが。一般的ではない記号をレポートで使うと私がよくわからなくて混乱します。 必要ならば定義 してください。学部までの講義なら、基本的に教員は「この記号は講義中だけの記号です、一般的ではありません」などと言うと思います。

ナビゲーション

この教材は、 2018 年度東京大学教養学部統合自然科学科専門科目「実解析学演習 I」のために執筆されたものです。 TA が書いた非公式のものです。 他の回は実解析学演習 I #real-analysis-exercise-1-2018から御覧ください。

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