東大英語要旨要約問題の私の解答

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東大の学部入試の英語の 1A は毎年要旨要約問題である。私の英語の勉強のため、解答を書きここに公開することにする。採点ポイントや感想も書くが、もちろん全く無保証である。

東大受験用の過去問集や参考書などで、満点を取れていないであろう模範解答を多く観測する。もちろん私は英語のプロではないから、英語の先生よりも英語力は劣る。しかし、私を拙い答案を超える模範解答をなかなか見ない。だったら私が書いた方がいいのではと思う。のでここで公開することにした。繰り返すが、もちろん以下の解答は全く無保証である。

難易度表

過去問に取り組むときは易しい方から難しい方へやったほうがいいだろうから、私の感じた難易度をここに書いておく。

年度 課題文の難易度 要約の難易度
2019 標準 標準
2018 やや易 標準
2017 標準 標準
2016 標準 やや難
2015 やや難 標準
2014 やや易 標準
2013 標準 標準
2012 標準 標準

2019 年度

解答

子供たちは、産業化以前は労働者で親から暴力を受ける危険もあったが、19世紀後半以降は子供として国から法的保護を受け、暴力が禁止され教育や遊ぶ権利が保証された。

ポイント

  1. 産業化以前は、児童は「労働力、労働者」「親の私有財産、または、親から虐待を受ける危険」があった。
  2. 19 世紀後半以降、「国から権利が保証」されるようになった。
  3. より具体的には、「虐待が禁止」されて「法的保護、権利が保障」された。

感想

要旨はさほど難しくはないのだが、変化の内容がはっきり分かるように、かつ、短く書くのが難しい。

まず 1. を短く書く案はいくつかあって、「親の所有物」と書いて、後から「虐待が禁止」として暗喩的に具体化する。または「親から暴力を受ける危険もあった」と書いて「暴力が禁止」と書けばこの部分は十分指摘したことになる。私は試験場で「虐待」という漢字を書くことが間違いなくできないので「暴力」とした。

途中にある「労動者や親から独立した存在」は、わかりにくいので「子供として」と書いた。しかしここは落としても構わないと思う。「法的保護」「権利を保証」で十分伝わるからである。

また 2. で「法的保護」という言葉は書きたいが、「国から権利を保証され」で十分まとまっていると思う。国が権利を保証するということは法律を作ることを通常意味するからである。

ここで 3. の「虐待が禁止され」は書く必要がある。「変化の内容」を要約する必要があるからである。「権利が保証」だとよくわからないので、私は「教育や遊ぶ」と書いた。確実によくなっていると思う。しかし具体例だからここまで書く必要まではないと思う。

2018 年度

解答

人は大衆に同調し、集団内で強化されることでうわさは広がる。対抗策は事実を提示する自由を守ることだが、人は事実をありのまま見ないので、誤りを訂正するのは難しい。

ポイント

  1. 噂が広がる理由として、大衆への同調が指摘されていること。
  2. 噂が広がる理由として、集団内で意見が強化されることが指摘されていること。
  3. 表現の自由で事実を提示することが対策として有効であるが、しかしそれでも誤った噂を防ぎ切れないことが指摘されていること。
  4. その理由として、人は事実を提示されてもそれを中立的に受容できないものであることが指摘されていること。

感想

読みやすい上に、論旨もわかりやすい。しかし制限字数内に過不足なくまとめるのは例年並に難しい。

最初の 2 つは簡単である。後の字数を考えるとこれ以上字数を費やすことはできないだろう。簡潔に言えばよろしい。問題は「対抗策」についてである。表現の自由で事実を提示することが有効であるが、それだけでは防ぎ切れないという論旨は書きたい。ただそれだけでは、どうして防ぎ切れないのかが残ってしまう。そこで 4. を絶妙に指摘するのが最も大きいポイントである。字数が少ないので、簡潔で良いし、問題文と同趣旨のことであれば圧縮した日本語で書いて良い。

私が思うに 1., 2. は書けないと終わっている。 3. は第 3 段落が正確に読めていれば書ける。問題は 4. を字数制限内で指摘することである。これができているかどうかで満点かどうかが決まる。いい問題だと思う。読みやすいから指導者を見極める上で使えそうである。受験生が英語の先生を見つける際は、この問題で正確な解答が書けるかどうかで、決めると良いかもしれない。最低限、これができない人に、要約の問題の解答を見てもらうのはやめた方がいいと思う。

2017 年度

解答

国と文化が結びついており、国によって仕事の方法が違うと考えるのは危険で、実際は国際化の影響もあり、職業や会社が仕事の方法や価値を決める傾向にある。

ポイント

  1. 広く信じられている考え方として「国と文化が結びついている、あるいは、国によって仕事、ビジネスの方法が異なる」というのがあるが、これらを否定していること。
  2. それが「危険である」ということを指摘していること。「ビジネスが失敗しかねない」「固定観念を持つべきではない」などでもよい。
  3. 実際は、「職業や会社、あるいは社会的地位」が、「仕事の方法や態度、あるいは価値」を「決める、影響している」ことが指摘されていること。
  4. これらが「国際化」の影響によるものであることが付記されていること。

感想

段落が多い問題である。 1. は第 1, 2 段落の帰結である。 2. は第 5 段落の帰結である。 3. は第 2 - 4 段落の帰結である。そして 4. は第 3 段落で明確に理由づけされているので拾っておきたい。

この問題はポイントが多く、解答のまとめ方は人それぞれだろう。出来るだけ前から順番に書くほうが要約しやすいかもしれない。

2016 年度

解答

人間社会が進化し、協力関係が家族を超えた集団へ広がったが、家族内と異なり集団内では人々に対等な役割がある。共通点を見出した他者を対等とみなすのは人類の傾向で、強い結束を集団内に生じさせ生存確率を上げるが、部外者からなる別集団との争いを生む。

ポイント

  1. 人間社会では、自分の所属している集団は家族の延長として捉えられる。
  2. その基礎には、共通点を見出した他者を対等とみなす人類の傾向がある。
  3. これは集団内に強い結束を生じさせ、生存確率を上げる。
  4. 一方で、共通点が無いものを部外者とみることにも繋がるので、別集団との対立をも生む。

感想

これは難問だと思う。指摘するべきポイントは普通だが、「正しい形」で指摘することが難しい(2. - 4.)。制限字数が 100 - 120 字と多いので、正確な形で要旨をまとめる必要がある。英文読解の難易度はともかく、要旨要約という意味では他の年度と比べて難しめに思う。また、第 3 段落を(短い時間で)正確に読解することも非常に難しい。さらに、読解だけではなく、要旨をまとめる際に自分の言葉で短い表現を思いつく必要がある(3., 4.)。ここも、相当難しい。

「家族内と異なり集団内では人々に対等な役割がある」は 2. で指摘したことになる。というのもこの文章で家族は主題でないからである。むしろ 2. の指摘を正しい形で行うことが重要である。ここに気づけばまとめる際にもう少し余裕が出てくる。

2015 年度

解答

人間は常には論理的でなく、危険を認知する際直感が先行する。この機能は人間が原始的な危険を避けるために発達したものだったが、現代科学的な危険の認識を妨げうる。

ポイント

  1. 「人間が常に論理的である」ことが否定されていること。
  2. 特に危険認識の際には、人間の機能としては直感は論理に先行することが指摘されていること。
  3. この機能は人間がかつての原始的な危険を避けるために発達したものであることが指摘されていること。
  4. 現代の科学的な危険の認識を妨げうることが指摘されていること。

感想

問題文を読むのが結構難しい。第 3, 4 段落は難解な構文が出てくるし、単語も難しい。しかし具体例であることもあって、第 2 段落末尾以降の内容は 4. を指摘できれば十分である。全体的に見れば、標準的な難易度だと思われる。

ただし、要約問題の難しさがモロに現れている問題でもある。その意味でも「標準的だ」とも言える。まず正確な要約のためには、 1. が指摘できること、「特に危険認識の際は」と断ってから 2. を指摘することが不可欠である。ここを誤ってはいけない。 3. は盛り込まないと 4. の意味がよくわからない。ここは落としやすいと思う。そして 4. も難しい。具体例ばかりで短く的確な表現が全く書かれていないから、自分で考えるしかない。 radiation detector の例や fatty food, hamburgers, automobiles, smoking の例や、飛行機より車の方が犠牲者が多い例などから、的確な表現を考える。「現代の」「科学的な」という言葉が妥当であろう。

2014 年度

解答

階段を長い年月、多くの人が昇降すると小さな力の積み重ねで大きくすり減る。同じことが二酸化炭素排出にも言える。1人あたりの排出量が地球に与える影響はわずかでも、全世界の人口をかけると影響は非常に大きい。

ポイント

  1. 階段の例で、長い年月、多くの人が昇降すると階段が磨耗することが指摘されていること。
  2. その理由が、小さな力の積み重ねであることが指摘されていること。
  3. 階段の例と同じことが二酸化炭素についても言えることが明記されていること。
  4. 1 人あたりの二酸化炭素排出量が地球に与える影響はわずかであることが指摘されていること。
  5. しかしそれでも、全世界で累積すると影響は非常に大きいことが指摘されていること。

感想

この問題は非常に教育的な問題だと思う。「ディスコースマーカーにしたがって重要な文を探そう」とか「具体例はカット」とかわけわからんメソッドをこれでもかと否定している感じがすごくいいと思う。しかし「普通の解き方」をして要約を真っ当に訓練している人にとっては、問題は比較的簡単だと思う。まず課題文が読みやすい。字数が多いので明確に類比を書くことができる。満点が狙いやすい。

まとめる際には、いくつか案がある。まず全体の構成だが、階段を「例え話」と捉えてから「同じことが言える」と書いて「二酸化炭素排出量」を出すのが私の解答である。または階段の例を説明して、「これと同様に」と宣言してから「二酸化炭素排出量」の主張の理由づけと捉える解答もあり得よう。どちらでも良さそうである。

carbon footsteps の訳語は「二酸化炭素排出量」としたし、 carbon が炭素である以上これは妥当だと思うが、その辺に曖昧さがあるなと思えば「環境問題」としても良いだろう。

この問題は「短く的確な一般化」を自分で考えて書く必要がない点で、 2015-16 に比べて易しい。あえていうなら、余計なことを書かないことが重要である。「我々は環境問題に自覚的であるべきだ」「環境を守る努力は大事だ」などとは書いてはいけない。

2013 年度

解答

クモの糸は複雑な分子構造をもち、しなやかであることでむしろ強度をもち、一部が壊れても全体の機能には問題ない。この知見は人間の作る構造物の強い設計に利用される。

ポイント

  1. クモの糸は複雑な構造からなっていることが指摘されている。
  2. 柔らかいことでむしろ強度が担保されている or 一部が壊れても全体の機能に問題がないことが指摘されている。
  3. この知見が人間の作る構造物(耐震構造や通信網)の安全性向上に役に立っていることが指摘されている。

感想

この問題は十分読みやすいし、まとめ方にもそこまで苦労はしない。どちらも標準的な問題である。

ポイントのうち 2. はどちらかだけ指摘されていれば十分であろうと思う。この 2 つは突き詰めると原因と帰結とも考えられるし、あえていうなら同義であるとも考えられる。私は両方いれたが、字数制限の中で両方書くのも難しいので片方はカットして構わないだろう。

また 1. は 2. を述べる中に「構造が複雑であること」が少しでも読み取れれば加点されると思う。ただし、 1. 自体は 2. の理由づけ、 3. を説明する理由にもなっているので、指摘されていないといけない。 3. で一般化されることを考えると、「注釈に molecular があるから」といって「分子」と書く必要まではないだろう(そんないい加減な指導をされる受験生はかわいそうである)。

一番難しいのは 3. のまとめ方である。思い切って「耐震構造や通信網」と具体例で指摘してしまうのも手である。文中でこの 2 つしか挙げられていないから、確かに要約したことになっている。しかし end up guiding structural engineers と書いてあるので、一般化する方が要約としてはより的確かと思う。「人間の作る構造物」「人間の構造設計」などと書くのが一案だろう。

2012 年度

解答

移民の増加が民族を分け国家の統一的価値観を脅かす恐れがある一方、今日のメディアにより、前世代の民族の境界と地理的な境界を超えた大きな社会が再形成されつつある。

ポイント

  1. 移民の増加により国家の統一的価値観が失われる懸念があることが指摘されていること。
  2. 民族の境界 and 地理的な境界を超えた、今までにない or 新たな or 大きな社会が作られていることが指摘されていること。
  3. これが今日のメディアによるものであることが補足されていること。

感想

問題文も標準的で、まとめる難易度も標準的である。 3. を指摘するのが難しい。 1. と 2. は大きな字数を費やす可能性があるが、ここを最小限にまとめ、その理由、つまり 3. を述べる必要がある。 3. はどこにも具体的な表現がないが、第 2 段落で例示されているのをまとめると「今日のメディア」とか「最新の視聴覚技術」などが妥当だろう。 1. と 2. だけでは物足りないことに気づくと思うが、そこが第 2 段落後半の表現である。

もちろん 2012 年の問題だから新聞記事やテレビ番組や DVD が全世界で同じものが見られる状態が「最新」なことも織り込んで考えねばならない。 2012 年度だとスマートフォンとインターネット回線に触れていないのは仕方ないことか。隔世の感がある。これを書いているのは令和初日(2019-05-01)である。

参考:要旨要約問題の解法

  1. 本文を読む。段落ごとに日本語でメモする。
  2. メモをみながら字数に合うように日本語で解答を書く。

昔も書いたが、要約問題に画一的な解法はない。パターンもない。内容を大づかみする問題でもない。「パラグラフリーディング」「スキャニング」のような意味不明なメソッドは一切必要ない。英語力が足りていて、英語が全部読めていることが前提で、その上で要旨要約をする。「ディスコースマーカーに注意」「重要表現に注意」なんてのは当たり前のことで、その上で英文を見渡して何が要旨であるのかを見極め、妥当で的確で短い日本語の表現で解答欄に書き込む問題である。

巷の参考書にはひどい解答も多い。ひとまず河合塾の解答速報は満点を取れていると思われるので、これを中心に勉強するとよいかと思う。また過去問ではないが、東大オープンの問題の解答解説も役に立つと思う。

参考図書

この記事を書くときはこの過去問集だけみてやっている。解答は参考にしていない。