今私がやるべきと思うこと

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前提:就活風景の変化

私は実は博士課程に進学せず、修士課程で民間企業に行くつもりだった。あることがきっかけで総合的に判断して、内定を辞退し、中退するつもりで博士課程に進学した。そして最後まで行き、運よく博士論文が書けて修了した。そのことの詳細はまた改めて書くとして。まず 4 年前と今の就活風景の違いについて記述しておきたい。

感じたこと

4 年前から私の志望はいわゆる IT 企業だった。当時の私には内定が出ていた。今から思い出すと、当時の就活風景は本当に楽観的であった。当時の私にはほとんど計算機の知識もなく、数学の運用能力も今よりずっと劣っていた。にも関わらず、 potential だけで内定をくれた。業務に必要な機械学習や AI やデータサイエンスの知識は入社後に習得すればいいじゃない、という企業が普通だった。

ところが今年就活してみて非常に実感したのが、今の業界は「機械学習の経験」「 AI の論文」「データサイエンスの実績」なるものが最重視されている。経験を持った人の中から、インターンなどで採ってみて、良さそうなら採用、ということが多い気がする。要するに私は門前払いなのである。企業の名前は書かないが、複数の企業から書類選考の時点で落とされている。その一方で、機械学習の経験がある新卒にすごく高い初任給を提示する企業もある。

もちろん、私が今無職であることは、即物的には、私が修士から博士にグレードアップ(グレードダウンかもしれないが)したことが影響しているのも間違いないところだろうが、コトの本質はそこではないと思う。「経験」を重視するようになったことである。

私の理解では、業務に必要な「経験」がないのは当たり前である。例えば私は数億円単位の資産を運用したことは一度もないけれども、その「経験」がなくとも金融・保険業界は人を採用する。それが普通だと思う。ところが今の IT 業界は 4 年前と比べて「経験」を非常に重視するようになった。クラウドとコンテナ技術で簡単にマシンと環境が調達・構築できること、自由に使える訓練用データが揃っていること、ライブラリが充実していること、 arXiv などに最新の論文が集まっていること、チュートリアルが充実していることなどが影響しているのだろうと思う。

何が起こると思うか

以下は余談である。実は 4 年前の就活風景でも、私はある業界で同じような風景を目撃していた。つまり「経験」を最重視していて、「経験」がない人が門前払い、「経験」がある人は高額な給与を提示されるという業界があった。

その業界とは、ソシャゲの業界である。

私の友人に、ある会社が 100 倍の時価総額になる過程で、そのきっかけになるゲームを開発していたエンジニアがいた。その後の彼のことを思い出す。

彼は、もちろん他社から引き抜きがあり、複数回転職している。彼の詳細は伏せるが、今の彼は決して悪い待遇ではない。ただし今の彼は冴えているとは言い難い。社内政治に苦しむ立場にいる。

今のソシャゲ(広義に解釈してスマートフォン向けゲーム)は 4 年前と比べて、ブームが終わった業界とは言えるだろう。そもそもゲームの数が減っている。

よく「これから機械学習ブームは終わる。終わった後、本物だけが残るレッドオーシャンの時代になる」という脅しが言われるようだけども、私はそこまで酷くはならないと思っている。今まぁまぁやっていけている人は 4 年後くらいには、少なくとも先ほどの彼のように悪くはない待遇で雇われているのではないだろうか。

しかし「今から」「私が」 AI/機械学習/データサイエンスに本格的に参入するのは厳しいのではないかなと思う。数年前のソシャゲと同じ風景が AI/機械学習/データサイエンスに今広がっていると仮定すると、ブームが去るのは 4 年以内だろう。この 4 年間で私が「何か」をするのは難しいと思う。

以上の認識にいたって、私は自分で普通の意味での就職活動をするのはやめることにした。知人の紹介やオファーを待つことにした。少なくともこの方が、不毛な時間を過ごさなくて済む。

今、何に備えておくべきか

以上の認識に至ってから、私の行動は別のものとなった。具体的には、以下の通りであると認識した。

  1. IT 業界でも AI/機械学習/データサイエンス ではない企業に就職する可能性や、金融業界をはじめとする他の業界に就職する可能性を考慮する必要がある。
  2. 2019-09 までに決まらなければ、数学のアカデミアで生きていく他ない。

このうち 1. に関しては、私にできることはかなり少ない。天命を待つしかない。せいぜい AtCoder をやって実力を高め、要素技術の勉強をしておくのが大事だろうと思う。付け焼き刃で機械学習の勉強をしてもいいことにはならないと思う。

さらに、あまり考えたくなかったのだが、 2. も考慮しておく必要がある。 2. の場合、国内のポストははっきり言って着きたくない。前のエントリにも書いたが、 duty が仕事になるからである。

多くのカネはいらないが、 30 代の時間は研究に使い、 40 代から徐々に後進の指導をはじめていく。そのためには国外にポストを求める必要があるだろうと思う。国内のアカデミアは、全体的に争いが激くて、性格が悪くないとやっていけない。そういうのを目にしたくない。全世界がこのような傾向にあるのかもしれないけど、少なくとも私の知っている言葉で話して欲しくない。

今、何をするべきか

結局のところ、私がするべきことは、以下の 3 つに集約される。

  1. 数学論文の生産
    • 2019 年に 1 - 2 本。
    • 加えて 3 年後に備えてネタを仕込んでおく必要がある。
    • ただし、民間企業就職後は必要ない。
  2. 英語の勉強
    • 国外追放されてもやっていけるだけの、相当高いレベル。
    • ただし、民間企業就職後は必要ない。
  3. 計算機の勉強
    • AtCoder
    • 要素技術

まず 1. については、ここに書いた通りである。 2019-09 を目処にして、そこで決まらなければ数学のアカデミアしかない。その場合、今年は何もやっていませんではまずい。 30 代は実力が試される時代である。私は solo player なので 1 年に 1 本生産できるかどうかというレベルである。しかもその 1 本は 3 年くらいかけて取り組まないといけない。 3 年後の論文は、今から仕込むしかないのである。それ以上のペースとなると人手が足りないので共著しかないだろう。 3. については先ほど書いた通りである。

問題は 2. である。大学院で留学する、海外に長期滞在するというレベルなら、英語力はそんなに高くなくてもいい。こういうこと書くと怒られるかもしれないけど、せいぜい英検準 1 級程度の語彙力と英語運用能力が備わっていれば困ることがないように周りを見ていて感じる。 TOEIC/TOEFL は試験への過剰適応が鍵となっているようにしか見えない。

しかし日本語が通じない環境に永遠に「追放」されるとなると、相当高い英語力が必要である。例えば訴訟に巻き込まれたらどうなるか。犯罪を犯さなかったとしても、警察や法廷で証言を求められたらどうなるだろうか。インターネット回線や携帯電話回線の契約はどうなるだろうか。銀行口座やクレジットカードについてはどうだろうか。その国の政治や治安について正確に知っておかないとどうなるだろうか。お医者さんにかかり、手術や医薬品について説明された時に理解できるだろうか。

そう考えると、留学や長期滞在といった、最終的に日本に戻ってくることを想定した程度の英語力では足りない。つまり現在の私の英語力程度では全然足りないのである。 国外追放されてもやっていけるだけの、相当高いレベル を目指す必要がある。

私がするべき英語の勉強

語彙

少なくとも、私はあとごまかしなく 1 万語単位で英単語を記憶する 必要がある。英検 1 級の語彙力をさらに一枚超えないといけないと思う。

また大学入試レベルであっても、基本的な単語の語法も完全にしておく必要がある。正直にいうと、これも課題が残っている。 鉄壁に書いてある単語・熟語の運用は完全に記憶・理解しておく 必要があるだろう。これは、普通の受験生よりは短くてすみそうだが、時間はかかる。

以上の内容は、来年の 3 月にギリギリ終わるかどうかである。そして、終わりはない。おそらく 3 万語程度までは、覚え続ける必要がある。

あと熟語についてもどこかで補わないといけない。これはまだ方法を考えていない。

文法・語法

ほぼ問題ないが、一応文法問題集を 2 冊程度やって 10 年前の知識に抜けがないようにする。これは意外と時間かかるから、今のうちから着手してある。

構文解釈

これもほぼ問題ない。念のため、割と新しめの奴を文法の後に 1 冊やるつもりである。

読解

上のが完全ならば、これもほぼ問題ないだろうと思う。せいぜい CNN EE や東大の問題で練習しておけば足りるだろう。

発音・アクセント

ありがたいことにもうすぐほぼ終わりそう。リスニングの必要レベルが大学入試と桁違いなので発音・アクセントからやり直す必要がある。発音記号、弱形、音の脱落・崩れ、音の連結、スペルと発音の関係、アクセントを全てやっている。

聴解

リスニングは非常にレベルアップが求められる。 大学入試と桁違いの英語力が要求される。その理由は、大学入試はそこそこのスピードで 2 回読まれるが、国外追放されると、私は 1 回しか英語を聞くことができなくなるからである。

多くの大学受験生は音声理論まで踏み込んでリスニングの練習をしない。私もそうだった。その時間がもったいないからである。だから上に書いたようなレベルで音声理論からやり直す必要があったのである。

それで、リスニングに関しては、読解よりも重視してやる必要がある。具体的には数分間のスクリプトをシャドウィングができるようなるまで 1 つ 1 つきっちり仕上げていく必要がある。今の時代は東大の過去問が大量に手に入るのでこれをやればよかろう。その前に 1 冊くらい少し難易度が低いものをやる予定である。

CNN EE はインタビューの文章自体に英語の間違いを含んでいることがあることと、記者によって話し方に癖があることを鑑みると、上級者向けだろう。私の場合正確な英語を聞いてそれを練習したほうがいい。おそらくそれで時間切れになる。

発話・作文

これも上の勉強がほとんど完全に終わっていれば問題ないレベルまで update されると思う。というのも作文も発話も、拙いレベルではあるけどメソッド自体は大学入試で終わっているからである。私は non-native speaker で理系のアカデミアで生きていくことになるのだから、正確で妥当な表現なら、どれほど易しい英語を書いても話しても決してそれで怒られることはない。

まとめ

いずれになるにせよ、とにかくベストを尽くすしかない。私の場合、単語を覚え、リスニングを重視してやっていくことになるだろう。終わりはない。

普通の民間企業に雇用されればいいと思うのだが、日本以外のアカデミアで骨を埋めるのもいいだろうという気がしてきた。