大学受験の英語と理系の大学入学後

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前提

まず、私は英語の知識が全くないわけではないが、英語の専門家ではない。科学英語の知識は全くない訳ではないが、その専門家でもない。以下は素人の個人の意見である。博士課程まで英語または英語教授法の修行を積んだ専門家の方が別のことを言っているならそちらを参考にしてほしい。

ついでにいうと、私は語学の才能が乏しい。河合塾本郷校に行って高沢先生に教わって初めて東大の入試問題が 100 点以上取れるようになった。大学入学後も、英語一列は、例の教科書を暗記するまで読み込むことはできなかったので、決して点数は高くなかった。思うに、同世代の東大に学生の数倍努力して初めて同じくらいの学力がつくのだという実感がある。そういうわけだから、以下のエントリはあまりいうことはアテにしない方がいいかもしれない。

さらに注意をしておくと、私は大学入試にしか興味がない。私が受験生を終えた後から大学入試の参考書は非常に進化した。今私はこれを主に勉強している。特にセンター試験と東大入試は、過去対策をしたこともあるので、英語の勉強の良質な題材となっている。英検は良質な問題が出ると思うので参考にはしているが、 TOEIC や TOEFL といった資格試験には興味がない。試験を受けるのにカネもかかるし、試験だから過剰適応が必要で、そんな時間はもったいないと思うからである。今後も必要がなければ受ける気にならないだろう。

以下では大学入試の英語と理系の大学入学後について思うことを書く。

序文

最近英語の 4 択問題を Twitter の投票機能を用いて出題している。私が問題を出す目的は、以下の通りである。

  • 私の勉強のため。いい問題を見繕って調べて解説することで理解が深まる。毎日勉強する習慣がつく。
  • センター試験や東大の問題は一部のアホな人から「簡単だ」と表現される。しかし実際はセンター試験で 200 点満点を取るのはかなり難しいし、東大の学部入試の英語で 100 点以上を取るには英語の知識も非常に高いレベルがいる。特に前者は現在の私の英語力ではできないだろうことである。そういう人たちに「簡単だとおっしゃるのであれば、その簡単な問題を正解できますよね?」ということで出題している。

当然その出題は「満点阻止系問題」が中心となる予定だった。ところがこれが延々と続くと、私は嬉々としてやるのだけど、解答する人は疲れてやる気がなくなるだろうから、時々清涼剤として「標準的問題」を入れてみることにした。私の Twitter は 2 次元絵 RT で延々と埋まっているのだが、なぜかフォローしてくれる人がいる。大学に入学した人なら「標準的問題」は即答できるだろうと思っていた。 8 割以上は正解してくれるだろうと思ったのだが、案外そんなこともないようだった。

これを見て、理系といえども英語をもっと勉強しておくべきでは…? と思った。 念のために言っておきますが、英語力が足りないを人として軽蔑するつもりは全くありません。一般に、何かの能力が劣っている人を貶すことは、最低の人間のやることです。 ただ、私が思うに、大学入試で良質な英語の問題を課すのは正当性がある。そのことについて述べておきたいと思う。

最近のプロコン界隈は高校生以下の方も多いらしい。そういう方がここを見ているかもしれない。その方たちのために、私の実体験という卑小な例で申し訳ないのだが、英語を勉強する目的や対策を書いておこうと思う。

大学入学後の理系の英語

英語の点数が何点であろうと、合計点が合格最低点を超えれば大学は合格する。晴れて大学に入学すると、以下の現実が待っている。

  • 遅くとも大学 4 年以降は、専門分野を勉強するために英語の文献を読むようになる。遅くとも修士課程 2 年には、英語の文章を書く必要がある。
  • にも関わらず、大学入学後は英語の勉強をする機会がほとんどなくなる。

この結果、結構やばいことがおきている。何が起こっているかというと、英語がはちゃめちゃな人というのが結構いるのである。

ここで補足しておくと、専門数学で使う英語は大学入試センター試験の読解よりもはるかに簡単である。難関私立の高校入試よりもレベルが低いと思う。他の理系の分野はもう少し難しい英語を使う必要があるが、少なくとも現行の東大入試を超えることはないだろう。

さて、現実としては、数理科学研究科だと、修士課程の少なくとも 10 人に 1 人くらいは英語の論文がまともに読めていない。辞書引いても読めていないのでセミナーが中断したこともあるくらいである。そして、博士後期課程の少なくとも 10 人に 1 人くらいは英語の論文がまともに書けない。どのくらいひどいかというと、動詞のない文を平気で書くレベルである。それでも数学の内容がよければ当然博士号に値するから、博士になれる。数理科学研究科は数理科学の学位を出す場所なので、これ自体は問題がない。

それで、まぁ、私の意見なのですが、大きなお世話と言われるかもしれないけれども、さすがにこれはひどい、と思うレベルです。

セミナーの文献が読めないと、数学の指導をしにきたはずの教員が英語の指導をすることになる。 Reading はともかく Writing は重大である。たとえその論文で重大な数学の結果が示されていたとしても、英語がはちゃめちゃだとそれを解読するのは難しくなる。ただでさえ数学の論文は読むのが大変で、私のような凡人だと 1 ヶ月単位で長い時間をかけて内容を消化するのだが、それに加えて英語が意味不明だとどうすればいいのかと思ってしまう。

大学入試のために英語を勉強する

悪いこと言わんから、受験生は英語の勉強をしたほうがいいと思う。今の時代だと「独学で」「一生懸命勉強すれば」センター試験は 200 + 50 点満点にかなり近い点数を取ることは可能であり、東大入試の英語は、英語の勉強だけで少なくとも 80 点は取れるはずである。これだけあれば、即物的には、大学入試の得点源にもなると思う。

色々あるが、勉強の仕方を書いておこうと思う。参考書の紹介もするが、自分の現在のレベルに合わせて、好きな参考書・問題集を読むといいだろう。

勉強の仕方は、以下の本は参考になる。私も以下の記述を書く際に参考にしている。

文法

まずは文法を完璧にやるべきである。実際のセンター試験や東大の文法問題は相当難しい問題も入っているのだが、 一部の満点阻止系問題を除いて、標準的問題は全部確実にできるようにしておくべき である。大学入学後も、少し難しい文法事項でも平然と論文に出てきて、かつ、書く必要が出てくる。

文法の知識が羅列されているような辞書みたいな本ではなく、 まず、予備校の先生が書いたような「大学受験用の」文法書をやるべきである 。 4 択が中心の本がいいだろう。

まず 1 回目で「怪しい問題」をピックアップして、一気に読む。 400 ページくらいの本なら 1 日 100 ページくらい進んで 4 日で読むようにする。次に複数回その本を通読して、解説を覚える。次に解答自体を忘れるために 10 日間くらい放置する。あとは「怪しい問題」だけに取り組み続け 2 回くらい正解するまで、何度も解き直すのを繰り返す。

単語

現在、語彙力が足りないと感じているならば、これもやるべきである。 寝る前に 1 時間くらい淡々と繰り返して 1 ヶ月に 1000 単語くらいを目安に覚えるべきである。 私の場合全く新規の語彙 600 語を 1 セットとして睡眠薬を飲んでから音声教材倍速を使って確認・記憶しているのだが、 12 回繰り返せば 95% 以上を覚えていることが明らかになっている。「覚えている」というのは英単語を見て 0.5 秒くらいで日本語の意味がわかるレベルのことである。

読者の方も自分で

  • 「1 日に $N$ 単語を 1 セットにして確認する」のを $M$ 回繰り返せば $P$ % は覚えている

という情報を記録しながら勉強すると良いと思う。できるなら $N \approx 1000$ くらいがおすすめである。私の場合は $(N, M, P) \approx (600, 12, 95)$ である。

ありがたいことにセンター試験も東大も語彙力は無理しない。特に東大は難しい語彙がある箇所を易しくリライトしていることが知られる。どんなに多く見積もっても単語帳で 2000 - 3000 語覚えればセンター試験と東大には足りるはずである。つまり 3 ヶ月で合格ラインに到達するはずである。ちなみに私の今の目標はあと 10000 語である。

思うに、英単語の暗記に頭を使う要素なんて原則ない。頭の良さなんて全く関係ない。ただ記憶するだけである。 ここを読んでいる人ならどんな学力の人でも『ご注文はうさぎですか?』の 5 人娘の名前を全員言えるでしょ。それはアニメを全部見ているからである。私の友達に中卒の人もいて自分は頭が悪いと言っているけど普通にガンダムシリーズの全タイトルの主要な登場人物を覚えているぞ。 暗記系は、ただ淡々と繰り返して覚えるだけである。

もちろん多義語とか、用法が重要な単語もあるのだが、またそれは別の機会に勉強すれば良いと思う。とにかく 1 ヶ月に 1000 単語が目安である。早いうちに一気にやったほうがいい。文法が完璧で、語彙力が足りると、以降の勉強は非常に簡単になる。

大学受験レベルなら、単語帳は充実している。好きな単語帳を使えばいいと思う。以下に良さそうな単語帳を掲げておく。私は受験生時代シス単の Stage 1, 2, 3, 5 をある程度覚えてそれで合格した。つまり 2000 語程度である。

熟語

やらなければいけないけど、単語のあとでいい。私も勉強しながらいい方法を探っている最中なので省略。

構文解釈

文法が終わったらすぐに構文解釈に入るべきである。つまり和訳の練習である。

今の時代は難解な構文を出すことはありえなくなってきている。私が受験生の頃は京都大学や私立の英語が難しい学部を受験する学生は非常に読みにくい英文を読まされていた。東大もそれに準ずるくらい和訳の問題が難しかった時期もあった。しかし、今は不必要に難しい構文は出なくなってきている。センター試験はもっとそうである。大学入学後も、理系なら、難しい構文を読むことも書くこともありえない、むしろ大事なのは内容なのだから、難しい構文は忌避するようになっている。

どの本とは言わないが、「定評ある古い本」たちが参考書として挙げられる傾向にある。しかし、その本はやめておいたほうがいい。合う人にはバッチリ合うのであるが、基本的にはやめておくべきである。不必要に難しい文は出なくなっているし、解説も古くて最新の英文法書と合致しない箇所もあるからである。傾向としては なるべくここ 10 年以内に出版された新しい本をやると当たりを引きやすい。

読解

構文解釈が終わったら、あとは読解が残るだけである。私が受験生の頃は「スキャニング」とか「パラグラフリーディング」とか「ディスコースマーカーに注意」とかアホなメソッドが流行ったのであるが、今の大学受験では無意味である。制限時間内に前から順番に読んで普通に解くだけである。センター試験や東大は十分時間制限に余裕がある。どれほど内容が多くなったとしても、 1 分間に 100 語を読む必要すらないはずである。したがっていわゆる「速読」も必要ない。

読解はどうやって勉強すれば効率的なのか私もよくわからない。というのも私は普通にできるから、過去どうやって合格点を突破したのか覚えていない。センター試験も東大の問題も、いわゆる「読解の問題」で間違うことは近年ほとんどない。受験生なら、何か適切な指南書を 1 冊はやったほうがいいかもしれない(しかしどれがいいのかはわからない)。センター試験の過去問から始め、東大の過去問にいくのがいいのは間違いないだろう。

私は暇な時や体調の悪いときは、センター試験の過去問、東大の過去問、あと CNN English Express のうち好きなものを読んでいる。

発音・アクセント

正確な聴解のためには、発音・アクセントからやるべきである。まず発音記号の読み方を勉強する。続けて弱系と音の脱落・変化を勉強し、音のつながりを勉強する。続けてスペルと発音の関係を学ぶ。

これはもう、適切な本がはっきりしているので、以下に掲げておく。次の 2 冊を順番にやれば十分である。これも単語と同様覚える系の分野なので、頭の良さは関係ない。とにかく覚える。

聴解

現代は聴解の教材は非常に充実している。しかし、普通にセンター試験と東大の過去問をやればいいと思う。両者はほぼ全部客観式の問題であるので、解答にバラツキはない。

やった問題を復習する際にシャドウィングをするというのが重要である。これは speaking の練習にもなる。完璧にできるようになるために、同じ問題を何度もやる羽目になる。

作文

ぶっちゃけ以上のことがしっかりできるようになれば、作文の勉強をほとんどする必要がないはずである。ある程度勉強が進んだ段階になって、以下の本を読んで対策を考えるとよろしい。

重要なポイントは以下の通り。

  • 東大の自由英作文は、課題に沿った内容が書けているかが重要である。
  • 少し自分の言いたいことや日本語文とニュアンスが違っても、最終的に内容が伝わればそれでよろしい。
    • 逆に最終的に生成された英文と言いたいことの内容が一致していなければ、仮に表面上の日本語訳が一致していても正しくない。
  • 自分が絶対正しいと確信している英文だけ書く。
    • 文法・語法の観点から正確で、なおかつ妥当な表現であるものに、高い得点がつく。我々は non-native speaker なのだから、細かすぎる勉強をしないように気をつける。

これは大学入学後に英語を書くときも同様である。簡単で正しい文を書けば書くほど大学では賞賛されるようになる。

英語力以外の英語の勉強

東大の入試で 100 点以上を取るならば、英語力以外の勉強も必要である。要約・和訳・英作文はほぼ満点を取るつもりでいく必要がある。そのためには、正確な読解ができることは大前提で、その上で的確な要約ができることと、日本語や英語で妥当な表現ができることは必須である。

この力は大学入学後に非常に役に立つ。過去のエントリで詳しく書いたので省略する。

問題は、これを独学する方法がないことである。何を隠そう、ここだけの話 市販の東大の過去問集や予備校の解答では、満点を取れていないことがたくさんある のである。勉強するのは、高校程度の学力でもできるのだが、指導するためには大学の先生と同じレベルの修行を積む必要があるのだろうと大学に入って痛感した。

私の場合、英語のプロである高沢先生が、私が満点が取れる答案を書けるまで毎週ダメ出しをしてくださった。幸運にも、高沢先生のような人が指導してくださる環境にある人は、問題なくそれを続けるとよろしい。そうでない人は…どうすればいいのか私はわからない。独学で頼りになる情報を以下に掲げる。

  • 河合塾の解答速報。悪いこと言わんから、東大入試で日本語で書く部分は河合塾の解答速報の方を参考にするべきである。国語も同じである。
  • 東大即応オープンの問題と解答。要約と和訳、英作文は、適切な出題と最高の模範解答、模範解答に必要なポイントの拾い方、盛り込み方が載っている。これが、全国の受験生が手に入れることができる唯一の指導だと言って過言でない。

余談だが、この力をつけるなら現代文・古文・漢文の学習も有効である。現代文は以下の本をやると良い。理系で国語が必要な人は東大か京大に行くのだろうと思いますが、どちらか 1 冊買ってできるところまでやれば十分であろう。絶版にならないうちに買ったほうがいい。