萌え絵と女性作家 (3)

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女性の萌え絵師について

愚かな人たちに付き合って色々述べてきたが、ようやく私が書きたかった本論に入れる。

キズナアイのデザインをした人

キズナアイのデザインをしたのは森倉円さんである。非常に綺麗な絵を描く方である。萌え絵師かと言われると個人的には微妙なラインなのだが、話の本論ではないので、萌え絵師に数えることにする。

森倉円さんは、女性で、育児中である。この記事には、育児の合間にイラストを描くことの苦労が述べられている。

必要な知識

この事実はキズナアイをバッシングする人にとってはだいぶ都合が悪かったようで、だいぶ無理筋の議論を産んだようだった。例えば「女性は男性に媚びる絵を描きたかったのではない、描かされているのだ」などと主張する人も出始めた。こういう議論を通すのは大変そうだなぁと個人的には傍観しているんだけど、バッシングに加担している人にはとりあえず以下の質問をしてみるといいと思う。

あなたは、あなたが今議論しているような絵を描く現役の萌え絵師を 5 人挙げることができますか?

例えば日本のプロ野球について学者的視点からなんらかの論考を書くならば、現役のプロ野球選手の名前を 10 人くらい挙げられることは最低限必要な前提であろう。例えばルネッサンス期の美術を研究している人であれば、その時期に活躍した芸術家の名前を 10 人くらいは挙げられるのが当然であろう。したがって、同様に、萌え絵や萌え絵師について学者的論考を示すのであれば、現役の萌え絵師を 5 人くらい挙げられるのは当然のこととして期待されるだろう。

もちろんそれは必要条件であって、十分条件ではない。あまりにも低すぎるハードルである。私がこれを言われれば、何も見ずとも 20 人くらいは瞬間的に挙げられる。アニメ・ゲームばかりやっていて萌え絵について決して詳しくない私ですらそんなものである。しかし、おそらく今回難癖をつけたほとんど全ての人は、萌え絵師の名前を 5 人すら挙げることはできないだろう。

現実

というのも、もし現役の萌え絵師 5 人も挙げられるほどの知識があるならば、その中には女性作家さんがほぼ確実に入り、現状を正しく認識しているからだ。

例えば、私は先ほど「何も見ずとも 20 人くらいは瞬間的に挙げられる」と書いたが、その中に和泉つばすさん、梱枝りこさん、涼香さん、 karory さん、三嶋くろねさんの 5 人は絶対に入る。もっと挙げろと言われても簡単で、なかじまゆかさん、舘川まこさん、鷹野ゆきさん、たにはらなつきさん、ななろば華さん、…以下キリがないので省略。少しマイナーなところだと、季月えりかさん、白森ゆせさん、あたりもいい絵を描くと思う。少し前の世代を含めるなら、七尾奈留さん、みつみ美里さん、樋上いたるさん、いとうのいぢさん、西又葵さん、…あたりだろうか。今のは、有名な順に挙げた訳ではないので、注意。

そして、今挙げた全員が、アダルトゲームの原画を経験している人である。アダルトゲームの原画担当となれば、相当売れている人である。それ以外でも、同人誌などで男性向け作品を描いている人をカウントすれば、ものすごい量になる。

この人たちがどれほど絵を描くことを愛していて、それを見て楽しんでもらえることを喜びとしているのかを、私は受け手として知っている。そこに萌え絵に全く興味ない学者(?)がやってきて適当な理屈を述べて貶すなんて、どれほど気持ち悪いことだろうか。私にとっても許せないことである。

もちろん、アダルトゲームの原画を(少なくとも経歴上は)やったことがない女性作家さんも多くいる。例えばワダアルコさん、ちょこ庵さん、蒼樹うめさんなど。あと BL 出身の人もいる(書く時間が勿体無いので以下略)。

私は別に今頑張って女性作家さんの名前だけ挙げたわけではない。むしろ男性の有名萌え絵師の名前だけを挙げる方がよほど苦労する。私が明確に意識している範囲だと、カントクさん、比村奇石さん、茶みらいさん、深崎暮人さん、珈琲貴族さん。少し意識の範囲外にある人だと、岸田メルさん、甘露樹さん、黒星紅白さん、こやまひろかずさん…という感じである。

ここに名前が挙がらなかった人もいるかもしれないし、私が忘れているだけかもしれないが、とにかく圧倒的に確実であるのは、有名な絵師は女性の方の方が簡単に名前が挙がり、そしてその多くが成人男性向けの絵を描いている人であるということである。

アニメを見ていればわかる

また、具体的な絵師について詳しく知らなくても、男性向けのエロ絵を描くヒロインが出てくるアニメ作品というものも普通に存在する。具体的に言えば『エロマンガ先生』の紗霧、『冴えない彼女の育てかた』の英梨々である。どちらもヒット作であり、最近のアニメに興味ある人なら見たことあるか内容は知っているはずである。そして、これらの作品を知っていれば「萌え絵師には女性作家が多くいて、その中には成人向けを普通に描いている」という「現実」は、指摘されれば極めて普通に受け入れるはずである。

バッシングは中傷である

それどころか、これらのバッシングは女性作家さんへの中傷であるとすらいえる。以下はもう書く気力がないのでツイートを引用する。

それでは、どうして女性の方が男性向けの絵を描くようになるのかという疑問も生じるであろう。最終的には人によるだろう。しかし例えばこげどんぼ*さんが話している内容は一読の価値がある。

結論

このバッシング事件は、私にとっては割と有意義であった。 Twitter にいる肩書きが偉そうにしている人たちの「薄さ」がわかったからである。逆に誰が正しい意見を述べているのかもわかった。

私は長く見積もっても 20 年以下しか深夜アニメを見てきていないので、年季の浅さを時々自覚する。私の友達の中には「最初にアニメ雑誌を買ってからはや 40 年…」「わかるわぁ〜」と言っている人たちもいる。しかし、その私の浅い知識に照らし合わせて見ても、今回の件はあまりにも「常識」とかけ離れたお粗末な「論考」が多かったので、その「常識」を共有することには意味があるだろうと考えた。だからこの記事を書いた。

愚かな考えを持つ人の考えを矯正することに時間を使うのは勿体無い。私もこんな記事を書くくらいなら少しでも論文を書き、プログラムを書き、よく遊ぶべきだろう。そんなことを思いながら書き切りました。終わり。

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