2018 年度計算数学 I の TA をやらない理由

更新日時:

これは今のうちに書いておくべきだと思うので、書いておきます。要点は次の通り。

  • 長い時間同じ人が居座るのはよくない
  • 計算数学は TA が「挑戦」をする場所という重要な DNA があったが、それが私の代で失われてしまったことに責任を感じている

特に言っておきたい。私は計算数学が嫌いになったわけではない。計算数学が今後も理学部数学科で(見識が狭く時代についていけない一部の教授陣から)見下されないような、名誉ある科目であるように心から祈っている。他人が失敗したり堕落したのを見て喜ぶ人間には絶対になりたくないし、なるつもりもない。

本文

同じ人が居座るべきでない理由

私は、健康状態が十分で、研究も順調ならば、本来なら 2017 年度で修了または退学していたはずの人間である。私が 2018 年度も TA をやればまるでゴーストのように居座ることになる。若くして老害になりたくない。

同じ組織に、同じ役割で長くいることは、何らかの堕落の温床に繋がる。後輩 TA が私に遠慮して何かができなくなるのは絶対あってはならない。昨年度、きちんと「引き継ぎ」ができなかったのは否めないのだが、その辺で必要以上苦労するのも現役 TA の経験になるとポジティブに解釈しようと思っている。今年は相当大変だと思うけれども、きっと何とかなるだろう。

計算数学は TA が「挑戦」をする場所

私が計算数学の TA を積極的に引き受けてきた理由は、学生を指導するという TA の本来の仕事に魅力を感じていたからというのももちろん含まれるが、最大の理由は、そこが 「挑戦」の場 であったということだ。

私がしてきた挑戦は、小さいものから、仕組みを動かす大きなプロジェクトまで、たくさんあった。ここには書かないよ。いっぱいあるからいくつかは思い浮かぶでしょう。そして、それらは実を結ぶことはほとんどなく、ただ私が生傷を負うことがほとんどであった。その中での、わずかな成功が 1 年に 1 つか 2 つあり、最終的に色々な人の利益へとなっていったのである。

そして、これらの活動は、たくさんの人に支えられていたのも、また揺るぎない事実である。まずは担当教員の一井先生の存在が大きい。実は、一井先生から私は一度も怒られたことがない(一方、指導教員から怒られたことは何回かある、大変申し訳ありません)。教員として許容できないことは、止められたことはあるけれども。すなわち、失敗しても、勝手に何かをやっても、怒られて二度とするなと言われたことがない。だから私は失敗しても、生傷を負うだけで済んだのだった。

この DNA は諸先輩方から引き継いだものである。私の場合は穂坂さんの影響が大きい。だいたい私の挑戦は、穂坂さんが「いいぞもっとやれ!」と言ってくださったからやることにしたのである。私は上手に人を動かすのが苦手だが、この部分は穂坂さんの得意分野だったから、しっかりアドバイスをもらってフォローしてもらえた。直接面識のある先輩に、北川さん、下江さんがいるが、彼らも穂坂さんとこの点は同じマインドを持っていたと思う。すなわち、 TA の挑戦とは、計算数学の DNA なのである。

こんなに素晴らしい環境はあるのだろうか。大抵の場合、失敗すると自己責任を被るだけでなく、社会的に不名誉な立場に置かれる。そうしてたまたま当てた成功だけが成功例となっていく。計算数学にはそういう側面がない。失敗してもまた挑戦できるし、いいぞもっとやれと言われる。 TA のあらゆる挑戦を歓迎し、それを伸ばしていく風土がある。いや、あった。いやいや、今もあるけれども、隠れている。

私の TA 在籍中の失敗点は、私がたくさんの失敗をして生傷負うだけを繰り返してきたから、それを見た後輩 TA に「俺は挑戦しなくていいな」と思わせてしまったことにあると思う。 後輩 TA で、計算数学の資源を使って、挑戦をする人を生み出せなかったことに、私は責任を感じている。 成功体験をもっと高い確率で重ねられなかった私の能力不足に起因するのかもしれない。また、私が後輩に「いいぞもっとやれ」というメッセージを発信できなかったのかもしれない。これ以上この風土が風化しないためには、やはり私はいない方がいいのである。

もちろん計算数学 TA の primitive な存在理由は、授業を存続させることである。そのためには TA 自身が挑戦することはどうでもいいことのように思うかもしれない。しかし、これほど目まぐるしく発展していく情報科学の世界で、化石のように使い古されたカリキュラムと資料を鰻屋のタレのように継ぎ足していくだけでは必ずひずみが生じる。 TA 自身が挑戦を続けることで、授業の内容もよりよい内容に変わっていく。そうして、計算数学は、理学部数学科の選択科目でありながらもあらゆる層に満足いく内容を提供でき、様々なレベルの人が一皮むけて旅立っていくのである。

全員でなくていい。誰か TA が、挑戦をしてほしい。私のように、勝手に何かをやってほしい。他の人からバカバカしいと思われそうなことであったとしても、やりたいと思うなら、能力を注ぎ込んで、形成してほしい。 たくさんの挑戦をしろ! 色々なものの仕組みを変えろ! 前例を乗り越えろ! と言いたい。

とまぁ、老害みたいなことを書きました。私も現役の researcher でありかつ engineer である。自分自身、挑戦を続けていく。 私は一人の researcher や engineer である前に、一人の player や fighter でありたいと願っている。 関係者の皆様のご活躍を願っています。

コメントする